検索窓
今日:2 hit、昨日:9 hit、合計:15,689 hit

決断 ページ14

.



「…ねぇ聞いた?あの子第一志望内定もらえたって」






大学で友達何人かが集まった時、ふとそんな話が始まった。



「まじか〜」「良いなぁ」など、溜息と共に口々に返す皆。



そうか…もうそういう人もいるよね…。



そんな会話に雰囲気だけ合わせながら、

私は至って冷静に、あることを考えていた。



…あの夜、泣いてしまったところを章大君に慰めてもらいながら、

頭の隅でぼーっと考え出したこと。



あれから何度か、同じように

夜になって泣いてしまうことはあったけど、

その度に章大君は優しく私を抱きしめ声を掛けてくれて。



必ず気付いてくれる彼に申し訳なさを感じながら、

このままではいけない、と一人思っていた。



…バンドをやめて、就職をする。



初めこそ、大袈裟な考えかもしれないと思った。



だけど…このままじゃ何もかも上手くいかないまま、

全てが駄目になるんじゃないかって。



中途半端な気持ちで思い通りにいくはずがない就活も、

もう以前のように歌えなくなってしまったボーカルも、

その影響を与えてしまうバンドも、ニバスタも。



…それなら、今このタイミングで私が抜けて、

先輩達がもっと希望ある状態でニバスタに出られた方が。



私は私で、真面目に就職を考えて就活に集中した方が。



今のままでいるよりも、

それぞれにとって良い結果が招けるんじゃないか、って。



でも…なかなか決断に踏み切れないまま、

代わりに涙ばかりが溢れてくる日々。



本当にそれで良いのか。



急がなくちゃいけないのに、最後の一押しができない。



そして、四月も終わりを迎える頃…



そんな私を見兼ねたかのように、

決意のタイミングは突然やって来た。






.






「…エイトの皆さーん、スタンバイお願いします」






今月最後のライブ出番前。



他のメンバーが次々にステージ上へ向かって行くなか…






「…」



村「…A、どうしてん、」






…足が、動かなかった。



舞台袖、それ以上先へと、進めなかった。



お客さんの前まで行けない。



人前に、立ちたくない。






村「おい、A…?」






異常を察知した信五君が、俯く私の背中に手を添える。



早く、早く行かないと。



そう思ってはいるのに、全く踏み出す気が起きない。






安「Aちゃん…!」






こちらに気付いた章大君が

一目散にステージ上から戻って来る。



.

・2→←・2



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (44 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
488人がお気に入り
設定タグ:関ジャニ∞
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:黒葡萄 | 作成日時:2022年5月5日 8時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。