決断 ページ14
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「…ねぇ聞いた?あの子第一志望内定もらえたって」
大学で友達何人かが集まった時、ふとそんな話が始まった。
「まじか〜」「良いなぁ」など、溜息と共に口々に返す皆。
そうか…もうそういう人もいるよね…。
そんな会話に雰囲気だけ合わせながら、
私は至って冷静に、あることを考えていた。
…あの夜、泣いてしまったところを章大君に慰めてもらいながら、
頭の隅でぼーっと考え出したこと。
あれから何度か、同じように
夜になって泣いてしまうことはあったけど、
その度に章大君は優しく私を抱きしめ声を掛けてくれて。
必ず気付いてくれる彼に申し訳なさを感じながら、
このままではいけない、と一人思っていた。
…バンドをやめて、就職をする。
初めこそ、大袈裟な考えかもしれないと思った。
だけど…このままじゃ何もかも上手くいかないまま、
全てが駄目になるんじゃないかって。
中途半端な気持ちで思い通りにいくはずがない就活も、
もう以前のように歌えなくなってしまったボーカルも、
その影響を与えてしまうバンドも、ニバスタも。
…それなら、今このタイミングで私が抜けて、
先輩達がもっと希望ある状態でニバスタに出られた方が。
私は私で、真面目に就職を考えて就活に集中した方が。
今のままでいるよりも、
それぞれにとって良い結果が招けるんじゃないか、って。
でも…なかなか決断に踏み切れないまま、
代わりに涙ばかりが溢れてくる日々。
本当にそれで良いのか。
急がなくちゃいけないのに、最後の一押しができない。
そして、四月も終わりを迎える頃…
そんな私を見兼ねたかのように、
決意のタイミングは突然やって来た。
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「…エイトの皆さーん、スタンバイお願いします」
今月最後のライブ出番前。
他のメンバーが次々にステージ上へ向かって行くなか…
「…」
村「…A、どうしてん、」
…足が、動かなかった。
舞台袖、それ以上先へと、進めなかった。
お客さんの前まで行けない。
人前に、立ちたくない。
村「おい、A…?」
異常を察知した信五君が、俯く私の背中に手を添える。
早く、早く行かないと。
そう思ってはいるのに、全く踏み出す気が起きない。
安「Aちゃん…!」
こちらに気付いた章大君が
一目散にステージ上から戻って来る。
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作者名:黒葡萄 | 作成日時:2022年5月5日 8時