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宮田はコートも脱がず、そのまま裕太の部屋へと入る。スリッパと床の摩擦を抑えるように音を立てず。
部屋の電気は真っ暗で廊下の灯りが漏れ入るのを防ぐため、ゆっくりと廊下と部屋を繋ぐドアを閉めた。
盛り上がってるベッドへと近寄ると、ベッドサイドには電気スタンドの豆電球がついていた。褐色の光が、小さく裕太の顔を照らしていた。
裕太の手には、スマホが握られていてその画面には『宮田のばか』と打ち込まれていた。
人が近づくとセンサーが反応し、画面が明るくなる仕組みとなっている。
「ごめんね…」
その文字が目に入ると、宮田は産んでもないのにまるで自分の子のように可愛く思えた。
目尻には、涙が乾いた痕が残っていた。
その痕を無意識に親指で撫でていた。
乾いた塩分は、少しざらつく。
盛り上がっていた布団が、もそっと動き出すと
寝返りかと思い宮田はその手を引いた。
その引いた手は、もう一人の手により掴まれる。
それは、眠たそうな目をゆっくり開けた裕太だった。
裕太は、無言で宮田を見つめる。
そして、その手を引き寄せると裕太は枕に預けていた後頭部を上げ、宮田の唇に自分のそれを重ねた。
宮田は驚きから目を見開く、触れた唇は裕太の少し分厚い弾力のあるもので、柔らかい。
一瞬のことで、その柔らかさを堪能する間もなく裕太が離れていくと、裕太は目尻を下げ慈しむように微笑んだ。
…夢だと思ってるのだろう。
そんな現実的ではない表情、仕草。
半開きの唇から声が漏れた。
「…好き、」
「………っ!」
その言葉に驚くが
誰かと間違えてる?そんな風に宮田の頭に過ぎった。
しかし、それを否定するように、続いた言葉に宮田はまた目を見開く。
「宮田、好き…」
"宮田"
確かに、聞こえた自分を呼ぶ声に…
宮田は何が起きてるのか分からない。
寝惚けてるだけ。これ以上、彼の夢の中に入ってはいけない、瞬時にそう思った。
本当に自分に向けて、自分を想って発せられたかは定かではない。でも、それは受け入れることはできない。
息子にいても可笑しくない子なのだから。
年の差なのだから。
これは勘違いだ。
「おやすみ、裕太くん」
宮田は裕太の髪を撫で、そのまま電気スタンドの灯りを消して、布団を整えると立ち上がり部屋を出た。
閉めたドアに背を預け自分の唇に指先で触れる。
それは久しぶりにしたキスだった。
甘い蜜のように…
息子ほど年の離れた相手と。
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ももは(プロフ) - ともみさん» ともみさーん!こちらにもコメントありがとうございますっ!遅くなりすみませんでした(/ω\)嬉しいです!MTと2S上手く出来てるか不安ではありますが、楽しかったです!Tくんの子離れ確かに寂しいです(><)最後まで御覧頂きありがとうございましたっ! (2019年3月24日 12時) (レス) id: db5af09c34 (このIDを非表示/違反報告)
ともみ(プロフ) - ももはさん、お疲れ様でした(^^)ももはさんの描くMTとても素敵でした(*^o^*)活躍する2S夫婦も好きでした( ^ω^ )♪みつちゃんと同じで段々子離れしていくTくんを見るのが寂しくもありました(笑)また他の作品も楽しみにしています♪ (2019年3月23日 11時) (レス) id: 5c37d93fa4 (このIDを非表示/違反報告)
ももは(プロフ) - よっちさん» よっちさんっ!いつもありがとうございます!可愛いTくん、私も描くのが新鮮でした。ぎこちないMTだったと思うので、そう言って頂けとても嬉しいです!かっこいいMさんまた書きたい!最後までご覧頂きコメントまで嬉しかったです!ありがとうございまたっ(/ω\) (2019年3月20日 0時) (レス) id: db5af09c34 (このIDを非表示/違反報告)
よっち(プロフ) - 可愛いTくんとかっこいいMくんにキュンキュンしました。FK・TKばかり読んでるのですがMTもいいなと思いました。右側のTくんがとても新鮮でめちゃくちゃ可愛いかったです(*^^*) (2019年3月19日 22時) (レス) id: f334e0e9dc (このIDを非表示/違反報告)
ももは(プロフ) - サナさん» サナさんっ!はじめまして!更新を楽しみにして下さっていたなんてっ、嬉しいです!次もちょっと今作のMTとは違う二人を絡ませる予定ですので、FK要素が強くはなりますが、是非ご覧頂けると嬉しいです!コメント嬉しかったです!ありがとうございましたっ! (2019年3月19日 17時) (レス) id: db5af09c34 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ももは | 作成日時:2019年3月7日 17時