恋は何歳まで出来ますか？

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翌日、宮田くんは裕太が起きるより早く家を出ていったため、裕太は宮田くんのいない朝をまるで…抜け殻のように過ごしていた。


いつも通りの時間に、たいちゃんは起きてきて、作り終えたお弁当をたいちゃんのレザーリュック鞄へと水筒と一緒にしまう。
水筒は2本。
1本はコーヒーが入っている小さめのもので
もう1本は緑茶が入っている通常サイズのものだった。


重苦しいダイニングの雰囲気を肌で感じ取った藤ヶ谷は、裕太の肩に優しく手を置き、そのまま宏光のところへと向かう。



「そーいえば、ひろ。今朝早く大倉から連絡が着てた。今日出張で戻ってくるみたいで。夜飲みに行ってきてもいい？」


「うん。いーよ、楽しんできて」



大倉くん戻ってきたんだ。
なんとなく会いたいと思ったけど、それは言い出せず宏光は相槌を返した。



＊


裕太も仕事で夕食はいらないと言うことだったから、久しぶりに母さんに会いに行こうと実家へ向かう。電車とバスを乗り継いで。
そんな時だった。


偶然にバスで乗り合わせたのは。


一番後ろの右側の席。
そこは、よく大倉くんと通学していた場所だった。
20年経っても、バスの形は変わっても変わらずにある席。


そこに、大倉くんがいた。


私はゆっくり、その空いてる席へと向かう。
大倉くんは、窓にコメカミを預け、目を閉じていた。


スーツにトレンチコート。
ネクタイは少し緩んで形を崩してる。
あの頃は制服だった大倉くんが、スーツを着て同じ場所にいることに少しだけ泣きそうになった。



起こさぬように、隣に腰かける。


一度、手を繋いだことがあったなーなんて。
記憶のふちに思い出しては口が緩みそうになった。



窓から見えるのはだいぶ変わった風景。
でも、変わらぬ家や道だってある。


「…ミツちゃん？」


青春の1ページを思い出していると、隣から声が聞こえてきた。
あの頃と変わらぬ声…


「びっくりした。ミツちゃんのこと思い出してたら、隣にホンモノがおるんやもん」


眠た目を擦りながら、窓からコメカミを離すと身体を起こす大倉くん。



「久しぶりだね。偶然で私もびっくりしてた」



大倉くんも実家に戻ろうとしてたのかな。
顔は少し疲れている気がした。


「早く用が済んだから、昼寝がてら家に顔見せよおと思ってて」


欠伸をしながら、そう答える大倉くんに懐かしくてくすりと笑ってしまった。

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