恋は何歳まで出来ますか？

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学校帰りの大倉くんはよく欠伸をしてたなあって。
藤ヶ谷くんと勉強をして帰る時、偶然に帰り時間が被り、よく一緒に帰ってた。



「お母さん喜ぶよ。でもまだ結婚しないのかーって急かされるかもね？」



大倉くんはモテるだろうし、仕事もバリバリ働いて稼いでるだろうから、選び放題で婚期が遅れてる典型だ。
選び放題だと中々決まらないものだよね。
結婚が全てじゃないし、独身生活も楽しいだろうから大倉くんは興味ないかもしれないけど、やっぱり親御さんは心配してるんじゃないかなーって大きなお世話だけど、思ってしまっていた。



「残酷だよ、その言葉は」


母の気持ちになってしまい、笑いながら宏光がそう言うと、返ってきた声のトーンは思いの外、低く宏光の耳へと届く。



「…大倉くん？」
「…なんでもない。ごめん。そうなんやわ。オカンにそう捲し立てられるから帰るの嫌なんやわ〜」


宏光が恐る恐る名前を呼ぶと、大倉は次の瞬間…笑って返したから、安心して宏光は胸をなでおろした。



大倉はずっと叶わない恋をしていた。
その相手とは一年に１回しか今は逢えないけど、
また逢えた。だから、今年は2回逢えることに…そんな小さなことに嬉しくなる。


様々な人と出逢ったけど、
どうしても比べてしまうのだ。
比べても仕方ないのに。
比べたら、適うはずもないのに。
分かっていても、比べてしまう。


このミツちゃんと。
高校生の時の自分の恋心と。


その頃の自分自身と比べてしまうと
出逢う人全てが恋じゃない気がして。



進むことが出来ずにいた。
20年もあれから経っていても。



あんなに真っ直ぐ誰かを思うミツちゃんを見せられると、全ての愛が信じられなくなってしまった。



「そや…今日、旦那借りるわ」
「うん。藤ヶ谷くんから聞いた。楽しみにしてたよ」
「藤ヶ谷くんって、ミツちゃんも藤ヶ谷やん」
「あっ」



宏光は大倉と二人でこの席に座っていると
年甲斐もなくあの頃に戻ってしまった。


「何か懐かしくて、思わず…」


照れる宏光の手を包みたくなるけど、
大倉はその手をグッと堪えた。


あの頃と何も変わらない。
あの頃と同じで君はずっと同じ人を好きでいる…



もっと強引に奪えば良かったなあ
高校生の自分は、こんなにも彼女を引きづるとは知らずにいた。


すぐに、他に好きな人ができると思ってた。



「あっ、バス停だ。じゃあね、大倉くん」
「おう。また明日」


あの頃のように思わず返した大倉に宏光はまた笑った。

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