検索窓
今日:1 hit、昨日:2 hit、合計:19,968 hit

後悔しないようにと言われた気がした ページ3

私は屋上から飛び降りて死んだ。そう、確かに死んだのだ。なのに、何故だろうか。


何故、私の目の前に黒髪黒目黒服の、刃が歪な形をしている鎌を持った青年がいるのだろうか。

ファンタジー?真逆、死後の世界?私の周りは見渡す限り白だ。否、無。三途の河とやらもない。何もない空間に私と青年だけが向かい合っている。

クエッションマークばかりが浮かぶ私にニヤリと笑った青年が口を開いた。

「やぁやぁ。最近は自 殺者が多くて困っちゃうよ。お陰様で俺は仕事に追われっぱなし。あぁ、自己紹介してなかったね。俺は、死神の落ちぶれさ」

いや、待って待って。死神の落ちぶれ?そんな真逆。あり得るわけがない。思考が顔に出ていたのだろう。死神の落ちぶれを名乗る青年は、やれやれと肩を竦めた。

「逢魔時に自 殺したのはお前だろ、Aさん。死神の落ちぶれは黄昏時の自 殺者を30日間生かす仕事をしてるんだよ。で、お前のとこに行ったって訳」

ヒヒッと笑ったが、こちらとしては笑えない。死ぬ為に屋上から飛び降りたのだ。ありがた迷惑もいいところだ。第一、生かされたところで行くあてもない。1日目で餓死決定だ。

しかも、名前を名乗ってないのに私の名前を知っている青年の言うことなど信頼できない。

「…ありがた迷惑ですよ」

「だからやってんじゃん。他の落ちぶれ君達がどうかはわからないけど、俺は死にたいのに生かされる人間の30日後を見てみたくてね。
たまにいるじゃない、構って欲しいから死んじゃったとか、未練あるのに死んじゃったとか。
そういうのは嫌だからさ。カマチョの自 殺者は他の奴らに押し付けてるんだ」

長ったらしい言葉を良く一度も噛まないで言えたなと訳のわからないところで感心してしまう。いけない、いけない。

「私は何が何でもあの世に行きます。…治に嫌われたのに戻りたくないですし」

青年は治の名前を口にした途端、大きな体を揺らして腹いっぱいに声を上げて笑った。

「ヒャッハッ‼アヒャヒャヒャヒャッハッ‼いやー、その依存心は病的だねぇ。えっと、お前の事はトラウマがあるとこに送り届けてあげる。俺はあの世から見てるから、30日間頑張りな〜ヒャッハッ‼」

刹那、足元がふやけたように、風景が震え、それがこの時間の終わりを示しているのだと察する。




意識が薄れる中、青年が「後悔しないようにね」と言った気がした。

ありがとうございます→←死へと追いやった依存心



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (88 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
148人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

シモナ(プロフ) - 太宰が好きさん» ありがとうございます!これからもこの作品と作者をよろしくお願いします! (2017年1月28日 11時) (レス) id: 9daf4d1881 (このIDを非表示/違反報告)
シモナ(プロフ) - 蝉さん» ありがとうございます!更新、頑張ります! (2017年1月28日 11時) (レス) id: 9daf4d1881 (このIDを非表示/違反報告)
太宰が好き(プロフ) - あぁ、、、私がはまるタイプだぁ、、、お気に入り作者いれます! (2017年1月28日 2時) (レス) id: 9272b634b0 (このIDを非表示/違反報告)
- 素敵です!!!更新楽しみにしてます!!! (2017年1月27日 20時) (レス) id: ef91e4f100 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:シモナ | 作成日時:2017年1月27日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。