後悔しないようにと言われた気がした ページ3
私は屋上から飛び降りて死んだ。そう、確かに死んだのだ。なのに、何故だろうか。
何故、私の目の前に黒髪黒目黒服の、刃が歪な形をしている鎌を持った青年がいるのだろうか。
ファンタジー?真逆、死後の世界?私の周りは見渡す限り白だ。否、無。三途の河とやらもない。何もない空間に私と青年だけが向かい合っている。
クエッションマークばかりが浮かぶ私にニヤリと笑った青年が口を開いた。
「やぁやぁ。最近は自 殺者が多くて困っちゃうよ。お陰様で俺は仕事に追われっぱなし。あぁ、自己紹介してなかったね。俺は、死神の落ちぶれさ」
いや、待って待って。死神の落ちぶれ?そんな真逆。あり得るわけがない。思考が顔に出ていたのだろう。死神の落ちぶれを名乗る青年は、やれやれと肩を竦めた。
「逢魔時に自 殺したのはお前だろ、Aさん。死神の落ちぶれは黄昏時の自 殺者を30日間生かす仕事をしてるんだよ。で、お前のとこに行ったって訳」
ヒヒッと笑ったが、こちらとしては笑えない。死ぬ為に屋上から飛び降りたのだ。ありがた迷惑もいいところだ。第一、生かされたところで行くあてもない。1日目で餓死決定だ。
しかも、名前を名乗ってないのに私の名前を知っている青年の言うことなど信頼できない。
「…ありがた迷惑ですよ」
「だからやってんじゃん。他の落ちぶれ君達がどうかはわからないけど、俺は死にたいのに生かされる人間の30日後を見てみたくてね。
たまにいるじゃない、構って欲しいから死んじゃったとか、未練あるのに死んじゃったとか。
そういうのは嫌だからさ。カマチョの自 殺者は他の奴らに押し付けてるんだ」
長ったらしい言葉を良く一度も噛まないで言えたなと訳のわからないところで感心してしまう。いけない、いけない。
「私は何が何でもあの世に行きます。…治に嫌われたのに戻りたくないですし」
青年は治の名前を口にした途端、大きな体を揺らして腹いっぱいに声を上げて笑った。
「ヒャッハッ‼アヒャヒャヒャヒャッハッ‼いやー、その依存心は病的だねぇ。えっと、お前の事はトラウマがあるとこに送り届けてあげる。俺はあの世から見てるから、30日間頑張りな〜ヒャッハッ‼」
刹那、足元がふやけたように、風景が震え、それがこの時間の終わりを示しているのだと察する。
意識が薄れる中、青年が「後悔しないようにね」と言った気がした。
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シモナ(プロフ) - 太宰が好きさん» ありがとうございます!これからもこの作品と作者をよろしくお願いします! (2017年1月28日 11時) (レス) id: 9daf4d1881 (このIDを非表示/違反報告)
シモナ(プロフ) - 蝉さん» ありがとうございます!更新、頑張ります! (2017年1月28日 11時) (レス) id: 9daf4d1881 (このIDを非表示/違反報告)
太宰が好き(プロフ) - あぁ、、、私がはまるタイプだぁ、、、お気に入り作者いれます! (2017年1月28日 2時) (レス) id: 9272b634b0 (このIDを非表示/違反報告)
蝉 - 素敵です!!!更新楽しみにしてます!!! (2017年1月27日 20時) (レス) id: ef91e4f100 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:シモナ | 作成日時:2017年1月27日 18時