飾りのないまごころだけ◆收蠅せ奸 ページ8
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時刻は11時半ばを指していた
小さめのハンドバッグを握りしめ、自室を出る
まだ約束の時間まで30分もあるが、待たせるより待つ精神の私は、噴水の前に向かおうと決心したのだ
そわそわして止まない心には緊張の色が混ざる
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「イ、イライさん…!?」
見かけない風貌だったので、誰だろう…と想像しながらその人物に近づいてみると、なんと正午に落ち会うはずの恋人だった
「A…?」
彼も予想外の展開だったのか、目を丸くする
「ふふ、そわそわしちゃって早めに来てしまったんだ。
だけど、まさか君もこんなに早く来るとは思わなかったよ。」
イライは照れ臭そうに頰をかき、私の服装へ視線を落とした
「今日は一段と可愛いね。そのワンピースも、髪型も。」
「あ、ありがとう……。イライさんも、その…」
今日の彼は何時ものミステリアスな雰囲気を思わせるような服装ではなかった
黒を基調とした衣服を纏い、特徴的な目隠し布と手袋はしていない
「はは、今日はゲームじゃないしね。
…こういう時くらい、格好いい恋人になれればいいんだが。」
そう言って私の手を取り、自身の手を重ねる
「あ…。」
私を見つめるターコイズ色の瞳に、全身の神経が逆立つかのように湧き出す
「さぁ、行こうか。」
イライは微笑み、ひょいと私のハンドバッグを持ったまま重ねた手を優しく引き、森の小道へと足を運ぶ
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先程とは違い、爽やかで心地の良い涼風が私たちを包む
…やっぱり、今日のイライさんは格好いいな
横目で盗み見ると、普段は見せない彼の綺麗な瞳が輝いているように見えた
「そんなに見られると、恥ずかしいな…」
「はっ……!」
「身体中に穴があきそうだよ。」
「なんですか、それ」
2人はお互いの顔を見合わせ笑う
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「わぁ……!」
思わず感嘆の声をあげる
少し薄暗い小道を抜けた先には、地平線の向こうまでに広がる花畑があったのだ
「とっても綺麗…!」
「喜んでくれて嬉しいよ。」
少し2人の間に静寂が訪れた後、イライは私に向き直り手を握り直して提案した
「そういえば簡単なものだけど、昼食を用意していたんだ。お腹は空いているかい?」
「え!イライさんが用意してくれたの?」
「簡単なものだけどね。」
彼は照れ臭そうに笑い、少し小さめのシートをバッグから取り出して広げ2人横に並んで座る
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虫眼鏡(プロフ) - ぽむちゃんさん» ありがとうございます、リッパーとジョゼフと一緒にアフタヌーンティーをする話がみたいです…! (2019年8月11日 19時) (レス) id: fbf6ffc701 (このIDを非表示/違反報告)
setuna7014(プロフ) - えっと、ケンカップルとか、溺愛とか読みたいです… (2019年8月8日 18時) (レス) id: 9c6758aed7 (このIDを非表示/違反報告)
ぽむちゃん(プロフ) - setuna7014さん» コメントありがとうございます!ナワーブ君かしこまりました!もし読みたいシチュエーションございましたら、またコメントの方へ教えてくださると嬉しいです!特になければそれでも大丈夫です('ω') (2019年8月8日 15時) (レス) id: 220fc1050f (このIDを非表示/違反報告)
ゆにゃ(プロフ) - ぽむちゃんさん» ぽむちゃん様、リクエストの期待通りな物を作って頂き有難うございます…!!すっごくすっごくキュンとさせられました(*´ω`*)有難うございました! (2019年8月8日 15時) (レス) id: f90955ba8c (このIDを非表示/違反報告)
ぽむちゃん(プロフ) - 虫眼鏡さん» コメントありがとうございます!ぜひぜひ、リクエストしていってください!! (2019年8月8日 15時) (レス) id: 220fc1050f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽむちゃん | 作成日時:2019年8月2日 18時