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「ん.....」



くすぐったい




誰かが頬をくすぐる。

懐かしい匂いが鼻を掠める。



なに...?だれ...?

あ、そういえばおれ....




“起きたか”

心の深くをくすぐるような甘い低い声。

すぐ隣から聴こえてきた。


「あ、おまえが舐めてたのか。」


”大丈夫か?オレら、別の場所に転送されたんだ。
あいつら、空中に放りやがって、身体が傷だらけだ“


そういえば、身体のそこら中ががズキズキと痛む。


「ここはどこ?」

”.......外だ。草の上に今いて、周りには木々が生い茂っている。“


どうりで、俺の大好きなこの癒される匂いがどこからも漂ってくるわけだ。

自然だけが作り出せる優しい匂い。


そんなことを思いながら、俺は自分の痛むところに手を当てた。

治れ、と念ずれば、かすり傷程度ならば一瞬で消える。

“なんだそれ!?”

隣の猛獣くんから驚嘆の声が聴こえた。

「ふふふ、おまえも痛むところ出してごらん。」

座っていた俺の膝に、優しく乗せられたのは、前足。

ふかふかな毛で覆われた足をゆっくりと触っていく。

自分で舐めていたのか少し湿っていたが、血も出ていたのだろうか。

手を当てると怪我の状態が伝わってくる。

「痛かったね。」

この状態だと他の場所も怪我してるだろう。

俺は自分の体以上ある大きさの獣に手を当てまわった。


“落ちる場所にいきなり草が高く生えだしたのは、オマエの能力だろ?”

「...俺は気を失っていたから、能力じゃなくて、自然の意思だと思う。」

“そんなこと、あるのかよ...”

「あるさ。」


心の汚れた人間とは違う、心の澄んだ生き物なんだ。



落下地点に草を生やしてクッションになってくれたおかげで、俺たちは軽傷で済んだのか。

ありがとう、と心の中でお礼をすると、風も吹いていないのに周りの草木がサワサワと揺れた音が聞こえた。






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作者名:momiji | 作成日時:2021年10月14日 1時

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