ドラマティック・ラブ【中原中也】

Dramatic＊26 ページ26

何もなかったかのように、三人でフォルテに戻ると、ざっきー店長が｢あ……｣と呟いた。

どうしたんだろう、もしかして今日の出来事がヤバすぎて、食品のタイムセールを逃したのかな。

……巫山戯ましたごめんなさい、実際は違いました。

改めて言います、ざっきーが驚きすぎて思わず、｢あ……｣と呟いた理由は──

｢絵里子……｣

別居中だった奥様が、約二年振りにざっきーの前に現れたことです。

『えっ、ざっきーの奥……』

｢A、ここはそっと遠くから、店長のことを見守っとこうぜ？｣

『そ、そうですね……』

見てる側の私が驚きを隠せないまま、離れながらもざっきーのことを中原さんと見守った。

会話はうっすらとしか聞こえないが、何か喋っているのは聞こえる。

｢絵里子、なんでここに……僕の顔なんか見たくないって……｣

｢確かにあの時、貴方にそういうことは言ったわ、でもね……ある貴方のお店のお客さんにあの時の詳しいこと、色々聞いたの。そしたらね、私貴方に凄く申し訳ないことをしたなって……｣

｢そんな、絵里子が謝ることはないよ。あの時は全部、誤解を招いた僕が悪──｣

｢いいえ、貴方は悪くないわ。あの時、ちゃんと貴方が言いたかったことを分かってあげなかった私の責任でもあるわ。
今更かもしれないし、貴方はもう私のことを冷めた女としか思ってないかもしれないけれど……もう一度、私とこれからの人生を歩んでくれますか───？｣

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