Sweet memory Ⅳ【中原中也】 (ページ8)

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｢答えられないなら良いんだ。だけど、私達はずっとAに寂しい思いをさせていた。｣

先刻、あんだけ自分のことを罵倒していた人は何処に行ったのだろう。

それ位、時雄の様子が怖いくらい一変していて、史子は恐ろしく感じた。

｢だから……お互いのことを考えて、離婚しないか？｣

時雄の口から“離婚”と言う言葉が出てきた時、史子はこれ以上何も言えなくなった。

一度深くなった溝は直ぐに修復が出来ない。

況してや二人には、互いに“思い人”がいるのだから……

｢もう夜遅くだから、此からの話は後だ。それとAを如何するのかも………｣

｢えぇ、そうね………時雄さん、最後にこれだけは言わせて。｣

｢何だ？｣

爽やかな風が吹いている中、史子は時雄に“最後の願い”を言った。

それを聞いた時雄は、フッと笑ってから“良いだろう”と応えた。

*♡*

妙子叔母さんの病室に着き、私は他の患者さんの迷惑にならないように小さく扉をノックした。

音を立てずに静かに扉を開けると、窓の外を眺めている叔母さんがいて。

『妙子叔母さん………』

名前を呼んだと同時に、妙子叔母さんは私の方を振り向いて“Aちゃん”と呟いた。

妙子叔母さんがいつもの様な感じだったからか、私はその場で泣き崩れてしまった。