Sweet memory Ⅳ【中原中也】 (ページ17)

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memory#77 ページ17

『中也君、何でギターじゃなくてボーカルにしたの？』

中也君が一頻りギターを弾き終わった後、私は彼に質問をした。

此は私が、ずっと前から中也君に聞きたかったこと。

｢俺の親父が、ギター弾きだったから。｣

艶のあるギターを撫でながら、中也君は言った。

その顔は、何処か悲しそうだった。

｢俺が、中学の時に”軽音部に入って、今まで趣味で弾いてたギターをする“って、親戚の人に言ったとき、言われたンだ……
“中也、御前の親父は昔ギター弾きだったんだよ”──って、此聞いた時、正直吃驚したぜ……｣

『お父さんは、有名な人だったの？』

｢さあな、今は行方知らずだし、唯の“ギターを弾いているだけの人”だったンじゃねェか？｣

中也君から“ギターを弾いているだけの人”と言う言葉を聞いた瞬間、胸の奥深くまで突き刺さった。

｢だけどな、俺親父に感謝をしているンだ。｣

『何で？』

｢軽音楽部のボーカル担当だけど、“音楽は人を幸せにする”ということを教えてくれたこと。それと何より……こうしてAと出会えたこと。｣

最後は少し違う気がするが、気にしないでおこう。

照れ臭くなったのか、その後中也君は私にめいいっぱい抱き締めた。