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一言二言及川と言葉を交わし、バスを降りて家へ向かう。



高級住宅街であるここら一帯は子供の笑い声なんてせず、静まり返っている。右を向けば日本庭園でもありそうな厳かな家屋。左を向けば、ヨーロッパ風のお城のようなお屋敷。


……息が、詰まりそうだ。と、その時、後ろから私の名前を呼ぶ声がした。




「A」

「どうしたの」




同年代の男性と比べても低い声は、重圧感がある。190センチ近い身長も相手を萎縮させてしまうが、私はもう慣れた。

さらり、東北の肌を刺すような冷たい風が、彼のぬばたまの黒髪をさらっていく。




「たまたま見かけたから、声をかけた」

「そっか」

「一緒に帰ろう」




「一緒に帰ろう」、彼はいつも決まってそう言う。私が小さい頃から。


「うん」と小さく頷き、彼の隣に並ぶ。いつも周りから無愛想だ、怖い、と遠巻きに怯えられているがそんなことはない。私が横に来ると、いつもより小さくなる歩幅がそれを表していた。少し不器用なだけなのだ、この男は。




「今日は車じゃないのか」

「うん」




さく、さく、さく。雪に二人分の足跡が刻まれる。




「若利」




彼の名前を呼ぶ。「何だ」無愛想な声が飛んでくる。

牛島若利。多分この辺ではちょっとした有名人だ。由緒ある名家である牛島家の長男であり、プロ入り当然と言われるほどの実力を持つバレーボール選手なのだ。

そして彼は、私の幼馴染だったりする。




「明日、1時間目なんだっけ」

「……数学じゃなかったか」

「そっか」




他愛もない会話。なんの偶然か、彼とは高校も同じで、クラスも一緒だった。



さく、さく。沈黙に雪が積もる。



この住宅街の中でも、一際大きな和の豪邸の門の前に着いた時、私達は歩みを止めた。







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設定タグ:ハイキュー , 及川徹   
作品ジャンル:恋愛
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作者名: | 作成日時:2019年4月26日 13時

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