【文スト】この世界で生きるのは不可能という結論が出ました 9

三百五十七話　［猛攻］ ページ11

戦場には様々な敵が存在していた。
皆が皆、兵士の顔つきをしていたかと聞かれれば答えはNoである。
無害な子どものなりをして敵に近づく者も、
美しく哀れな女性の見た目をして敵の喉を掻き切る者も、
力のない老人の容貌をして何百人も葬ってきた者もいた。
そういった者たちに、福地は勝ってきた。



「ざまぁ、みろ…！！」



戦場には、Aよりも強い異能者も暗殺者も大勢いた。
Aよりも体術に優れている者も、
Aよりも異能が強い者も、
Aよりも才能に溢れた者も、たくさん。
なのに、福地はゾッとした。



ーこの娘は！自分の命より儂の命を取るか！ー



それは執念だった。
必ずお前を地獄に引き摺り落としてやるという、確固たるもの。



「よそ見して、いいの？」



ふ、と血塗れの唇が笑った瞬間、福地の体を弾丸が貫いた。
先程Aがばら撒いた弾丸の一つが福地の右腕を貫通し、赤い花を咲かせる。



「っ」


福地はすぐに体制を立て直し、立原の方を向いた。
その瞬間、目の前が砂嵐のように乱れる。



「なっ…！？」



目に入る細かな砂、いや、



「砂鉄か…！！」



「ご名答！！」



異能の底上げにより、さらに細かい金属まで操作が可能になった。



「視覚は重要だよなぁ！？」



視界が塞がれたことで、一気に形勢が逆転する…ことはない。
視界が塞がるなど、戦場では珍しいことではなかった。



ー居場所は判る、問題ないー



一つ問題があるとすれば、立原もそれを判っていたことだ。
歴戦の猛者である福地と自分とでは実力差がありすぎる。
ならばどうするか、






ーまず、視覚を潰すー



思い出すのはAの言葉。
二人で限界まで話し合い、どうやって勝つかを何百通りも想定してここまで来た。
無策？そんな莫迦な真似はしない。
何百回もイメージを創り出しては破り捨て、勝つことだけを強く願った。



ー視覚が無くなった人間はその他の五感を頼りにするー


ピンッ


Aは震える手で金属と火薬の塊を持つと、歯でそれを引き抜いて投げる。
立原により操作されたそれは、福地の目の前で起爆した。



音響爆弾が、爆ぜる。



その瞬間に福地の聴覚は一時的に機能を失った。



ー次は平衡感覚、それを潰せば…ー



福地の立つ地面の下、土やコンクリートに含まれる僅かな金属を操れば、ボコリと盛り上がり、バランスが崩れる。



ー倒せるー



その一瞬を狙ったかのように、日本刀が突き刺さった。

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