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微睡の中で ページ7

いつだって叶わない夢を望んでいる。
父も生きてて、母も健在で、三人で穏やかに暮らす夢。



ーこんな未来だったらどんなに幸せなんだろうー



こんな世界なら自分は歪まなかっただろう。
こんな世界なら幸せに生きられただろう。



ーそんな幸せな世界だったらー



「そんな世界だったらいいと、何度も思いました」



聞こえてくるのは、他でもない自分の声。
これはいつの記憶だろうか。



「父が生きて、母が生きて、私も笑っていられる世界。
それはどんなに幸せで、綺麗なのだろう」



これは私?誰と話しているの?



「でも、そんな世界あり得ない。
来るはずもない、莫迦げた、壊れた未来なんです。
私が壊した、私のせいで二人は引き裂かれ、死んだ」



そう、そうだ。
私が父と母の幸せな未来を奪ったんだ。



「可能性がひとつもない未来を追うつもりはありません。
そんなの時間の無駄ですから。…でも、もしもそれが叶うのだとしたら」



もし、"過去が書き換えられるのだとしたら"



「私は、悪魔にだって魂を売ってやる」



魂一つで叶うのなら、安いものだから。



ーだから…私はー



あれ、どうして?



ー私、いつこんなことを云ったの?ー



「A!!」



意識が浮かんでいく。
ゆっくりと瞼を持ち上げる。
視界に金色の蝶が舞っていた。



「よさ、の…せん、せ…?」



「…はぁぁぁ、良かった目が覚めて」



与謝野は気が抜けたように椅子に座り、深く息を吐いた。
目だけで周囲を確認すると、そこは探偵社の医務室だと判る。



「アンタ、川べりで倒れてたんだよ。
織田がぐったりしたアンタを連れてきたときは大騒ぎだったさ」



アンタ、なにがあったんだい。
与謝野の質問に、記憶がゆっくりと戻ってくる。



「あの人、あの人は…」



「アンタ以外には誰もいなかったそうだよ」



「…そ、う」



恐らく睡眠薬でも打たれたのだろう。
それほどまでに自分が邪魔だったのか?それとも、



『なにも思い出さないで』



思い出して、欲しくないから?
彼は私を裏切った、でもあの時間は嘘じゃ無かった。
じゃあなにが真実なの?



『あぁもう、判らない』



敵である自分を、何故殺さなかったのか。
情けをかけたのか、情がうつったのか。
その答えが出ることはなかった。

人間失格と魔女→←大丈夫だから知らないままで



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ゆんこ(プロフ) - 夢小説で初めて泣きました…3周くらいしても毎回泣いてしまいます、! (9月11日 0時) (レス) @page50 id: ea003ef446 (このIDを非表示/違反報告)
蒼真 - ほんとにすごいです…何回も読み返しています…その度に泣いてますよ…ほんとに天才だと思います。いやこれまじでアニメ化して欲しい。小泉ちゃん大好きです!!!! (8月19日 15時) (レス) @page50 id: c4ce57e384 (このIDを非表示/違反報告)
夏蜜柑(プロフ) - 本当に久しぶりに物語を読んで泣きました!すごく心に響いて毎度毎度わかっているのに泣いてしまいます。この物語を描いてくださってありがとうございます! (8月14日 15時) (レス) @page50 id: d710d605b3 (このIDを非表示/違反報告)
ぺぽん(プロフ) - 1年ほど前からずっと本編も番外編もBRASTも読み返しています🥹一つ一つの表現が素晴らしすぎて、同じく小説を書いているのですが勉強させてもらってます。ずっと応援し続けます! (2022年10月27日 12時) (レス) id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
桜月(プロフ) - 本編、番外編を見てから来ました。二人のやりとりが本当に儚くもあり、切なくもあって、、本当に涙無しでは読めないくらい感動しました。素敵な作品に出会えて本当に良かったです!このような素敵な作品をありがとうございました。 (2021年9月21日 20時) (レス) @page50 id: df8a2b67ab (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2019年11月9日 21時

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