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魔女の再来 ページ38

長い長い月日が流れた。
ポートマフィアとは前首領の遺言により協定を結び、ヨコハマの秩序は保たれた。
そんな中、裏社会に一つの噂が流れるようになった。



魔女が、蘇った、と。



「まさかそんな噂話をする為に私を呼び出したのですか?」



何重ものセキュリティに守られた特務課の本部。
そこで向かい合う、二人の男女。
一人は異能特務課のトップ、種田山頭火。
もう一人は武装探偵社の社員、小泉A。
その会談を見守る特務課の者達の顔色は悪く、皆いつでも銃を抜けるように身構えていた。



「そないな訳ないやろ。
ただ、この前の礼をしようと思うただけや」



種田はそう云うと、懐からUSBメモリーを出した。
Aはうっそりと微笑み、それを受け取る。



「慥かに頂きました」



これでまた一つ、情報を手に入れた。
Aは豪奢な椅子から立ち上がり、ペコリと会釈をする。



「また困ったことがありましたらご相談くださいね。
私に出来ることならなんでもしますから」



にっこりと微笑む仮面の裏には、獣が居る。
特務課に先日渡した情報は、裏社会で手に入れたもの。
血に、べったりと汚れたもの。



「それでは、さようなら」



青ざめた顔の特務課の者たち一人一人に微笑みかけ、
間違っても表に出せないような密会を終える。



「魔女の、」



「…はい?」



種田が母の忌まわしい、そして"今の自分の呼び名"を呼ぶ。
なのにその表情はひどく辛そうで、



「…すまん」



それはなんに対する謝罪?
母の過去を隠していたこと?
特務課と裏で繋がっていること?
それとも、



「"また"…全てを背負わせてしまった」



「!」



私が、この街を守る為に母と同じことをしていることですか?
あの人との約束を破って、同じになってしまったこと?



『どうして謝るの、私が選んだことなのに』



彼は知っているのだろうか。
証拠もなにも残していないのに、私の手が既に赤くなっていることを。



仕方のないこと、貴方が謝ることじゃないのに。
だって、謝ったってなにも変わらない、変えられない。



「…なんのお話でしょう?」



Aは笑う。
なにも知らないように、天使のような笑みで笑う。



「それでは、さようなら」



私は大丈夫、どんな手を使ってもこの街を、世界を守ると決めたの。



ー後悔なんてしないー



少女は少しずつ、大人になっていく。

果たすべきもの→←消えたのは



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ゆんこ(プロフ) - 夢小説で初めて泣きました…3周くらいしても毎回泣いてしまいます、! (9月11日 0時) (レス) @page50 id: ea003ef446 (このIDを非表示/違反報告)
蒼真 - ほんとにすごいです…何回も読み返しています…その度に泣いてますよ…ほんとに天才だと思います。いやこれまじでアニメ化して欲しい。小泉ちゃん大好きです!!!! (8月19日 15時) (レス) @page50 id: c4ce57e384 (このIDを非表示/違反報告)
夏蜜柑(プロフ) - 本当に久しぶりに物語を読んで泣きました!すごく心に響いて毎度毎度わかっているのに泣いてしまいます。この物語を描いてくださってありがとうございます! (8月14日 15時) (レス) @page50 id: d710d605b3 (このIDを非表示/違反報告)
ぺぽん(プロフ) - 1年ほど前からずっと本編も番外編もBRASTも読み返しています🥹一つ一つの表現が素晴らしすぎて、同じく小説を書いているのですが勉強させてもらってます。ずっと応援し続けます! (2022年10月27日 12時) (レス) id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
桜月(プロフ) - 本編、番外編を見てから来ました。二人のやりとりが本当に儚くもあり、切なくもあって、、本当に涙無しでは読めないくらい感動しました。素敵な作品に出会えて本当に良かったです!このような素敵な作品をありがとうございました。 (2021年9月21日 20時) (レス) @page50 id: df8a2b67ab (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2019年11月9日 21時

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