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消えたのは ページ37

美しく笑う少女の手を、気づいたら払い退けていた。
痛いなぁと手を撫でる少女に抱くのは、恐怖。



「おい、小泉、お前は…」



「昨日は取り乱してすみません、もう復帰できますから」



芥川の横を通り過ぎ、仲間に謝罪をする少女。
その姿は昨日、あれほど取り乱し泣き叫んでいた姿は何処にもない。



「あ、あぁ、もう大丈夫なのか…?」



「はい」



面食らった国木田に、少女がふわりと笑う。
仲間の誰もがその変化に気づき、動揺していた。
誰よりもその変化に驚いていたのは、福沢だった。



「A、お前は」



彼はなにかを云おうと少女の名前を呼ぶ。
大丈夫なのか、なにがあった、そんな言葉をかけようとしていたのか。



「どうか、されましたか?」



しかしそれは、笑顔という拒絶で返された。
本能的に判る、これ以上彼女は何も云わない。



「私は大丈夫ですよ」



そしてこれが、今までの小泉Aが消えた瞬間であった。



ーさようならー



ポートマフィアとの戦いは、死んだ首領の遺言により協定という形で終わりを告げた。
そして、中島敦と泉鏡花の探偵社移籍。
これからヨコハマに訪れるであろう危機を共に乗り越えろ、と。
長い年月をかけて、守っていくしか無いのだ。



時は流れゆく、かつての白雪姫の記憶を風化させて。



Aは変わった。
涼やかな表情で、淡々としつつも凛とした姿は今や何処にも無い。
明るく飄々として、常に笑顔を浮かべている。
大人びていながらぶっきらぼうで、それでも子どものように芥川と喧嘩をしていた彼女は、
今では穏やかな口調で、時に冗談を云っては場を明るくさせている。



これが本当のAなのかもしれない



いつしか仲間はそう思うようになった。
最初こそ混乱した、人が変わってしまったようなAの姿に戸惑った。
しかし、それは決して悪いことではなかった。
以前より仕事ぶりも良くなったし、仕事外でも友人関係を築いている。
これでいいのかもしれないと、皆が思った。



「思わさせている、の間違いだろう」



「どうしたんだい、芥川」



すっかり皆に溶け込んだ同期は、相変わらず底の見えない笑顔で笑う。
それがどうしようも無く、彼には不快だった。



「怖いなぁ」



睨むように見つめてくる芥川に、少女はケラケラと笑った。
腹立たしい、そんな感情を隠しきれなくて、
芥川は忌々しげに舌打ちをした。

魔女の再来→←あの子は何処に



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ゆんこ(プロフ) - 夢小説で初めて泣きました…3周くらいしても毎回泣いてしまいます、! (9月11日 0時) (レス) @page50 id: ea003ef446 (このIDを非表示/違反報告)
蒼真 - ほんとにすごいです…何回も読み返しています…その度に泣いてますよ…ほんとに天才だと思います。いやこれまじでアニメ化して欲しい。小泉ちゃん大好きです!!!! (8月19日 15時) (レス) @page50 id: c4ce57e384 (このIDを非表示/違反報告)
夏蜜柑(プロフ) - 本当に久しぶりに物語を読んで泣きました!すごく心に響いて毎度毎度わかっているのに泣いてしまいます。この物語を描いてくださってありがとうございます! (8月14日 15時) (レス) @page50 id: d710d605b3 (このIDを非表示/違反報告)
ぺぽん(プロフ) - 1年ほど前からずっと本編も番外編もBRASTも読み返しています🥹一つ一つの表現が素晴らしすぎて、同じく小説を書いているのですが勉強させてもらってます。ずっと応援し続けます! (2022年10月27日 12時) (レス) id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
桜月(プロフ) - 本編、番外編を見てから来ました。二人のやりとりが本当に儚くもあり、切なくもあって、、本当に涙無しでは読めないくらい感動しました。素敵な作品に出会えて本当に良かったです!このような素敵な作品をありがとうございました。 (2021年9月21日 20時) (レス) @page50 id: df8a2b67ab (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2019年11月9日 21時

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