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嘘の中に隠れた真実 ページ4

信じていた、あの人のことを。
なのに裏切られた、それが悲しくて仕方なかった。



「たしかに、私はポートマフィアの首領だ。
芥川君の妹も誘拐した、君を騙した」



正体を隠してカフェで話をした。



「でも、嘘じゃない。
私は…君を騙すつもりなんて無かったんだ」



泣きそうな顔で、太宰は感情を吐露する。



「…本当はあの日、君に会うつもりは無かったんだ。
他人として、全く知らない人間として過ごせば、君は幸せになれる」



あの日、カフェで出会った日も。



「でも会ってしまった、判ってた、関わってはいけないと。
何度も何度も会わないようにしようと思った、でも」



彼の声が震えている、そんな気がした。
悲しそうなその声が、父が死んだ時の自分と重なる。



「でも…君と話していると、すべてを忘れられたんだ」



「忘れ、られた?」



風が吹く、街の音が酷く遠くで聞こえた。



「なりたくて首領になった訳じゃない」



『なりたくて当主になる訳じゃない…』



「でも、やるしか無かったんだ」



『でも、やるしか無いの』



太宰の言葉が、かつて親戚の家に引き取られた自分と重なる。
参加したくて跡取り争いに参加した訳じゃ無いのに、
恨まれて、憎まれて、そして殺されかけた。



「…ごめん、君を騙して。
でも…殺すのはやめてほしい」



太宰は悲しげに笑う。
Aの白い手を見つめ、目を細める。



「君は、綺麗なままでいて」



何で、そんなに悲しいことを云うの。
まるで自分が穢れているような。



「もう、君の前には現れないから」



太宰の笑顔が、かつて作り笑いをした自分によく似て見えた。
背中を向けて、彼は遠くへ歩いて行ってしまう。



「待って」



その背中が、雨の中出て行って冷たくなり帰ってきた父の姿と重なる。



「ねぇ、まって」



引き止めないと、でも、私になにができるの。
裏切られたようなものなのに、今更。



「待って!!」



引き止める筋合いなんて無いのに、叫んでしまった。
Aの声に太宰は驚いたように振り向く。



「なに勝手に話終わらせてるんですか!!」



苛立ちを見せるように、ズンズンと彼に近付いていく。



「なんで!!そんなに悲しい顔して嘘つくんですか!!」



その叫びは、彼に届くのか。

少女の叫びと哀情→←嘘つきはだぁれ?



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ゆんこ(プロフ) - 夢小説で初めて泣きました…3周くらいしても毎回泣いてしまいます、! (9月11日 0時) (レス) @page50 id: ea003ef446 (このIDを非表示/違反報告)
蒼真 - ほんとにすごいです…何回も読み返しています…その度に泣いてますよ…ほんとに天才だと思います。いやこれまじでアニメ化して欲しい。小泉ちゃん大好きです!!!! (8月19日 15時) (レス) @page50 id: c4ce57e384 (このIDを非表示/違反報告)
夏蜜柑(プロフ) - 本当に久しぶりに物語を読んで泣きました!すごく心に響いて毎度毎度わかっているのに泣いてしまいます。この物語を描いてくださってありがとうございます! (8月14日 15時) (レス) @page50 id: d710d605b3 (このIDを非表示/違反報告)
ぺぽん(プロフ) - 1年ほど前からずっと本編も番外編もBRASTも読み返しています🥹一つ一つの表現が素晴らしすぎて、同じく小説を書いているのですが勉強させてもらってます。ずっと応援し続けます! (2022年10月27日 12時) (レス) id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
桜月(プロフ) - 本編、番外編を見てから来ました。二人のやりとりが本当に儚くもあり、切なくもあって、、本当に涙無しでは読めないくらい感動しました。素敵な作品に出会えて本当に良かったです!このような素敵な作品をありがとうございました。 (2021年9月21日 20時) (レス) @page50 id: df8a2b67ab (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2019年11月9日 21時

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