【文スト】この世界と獣と白雪姫【BEAST】

新人二人の仲の悪さは？ ページ10

「そもそも、貴様の異能は好かん。
僕の異能を操り、簀巻きにした挙句解除の仕方が判らず、
半日あの状態であったこと、忘れんぞ」


「あれは謝って終わった事。
そもそも、出会い頭に攻撃してきたお前が悪い」



「なんだと」



「なにか文句でも？」



目の前で互いに睨み合いながらも手は出さない二人。
先程、頭上に茶を溢された芥川は膨大な殺気を発した。
女給を攻撃こそしなかったが、突然の出来事に殺気を放つほど彼は危険なのだ。
国木田達が、咄嗟に拳銃に手を伸ばすほどに。



『そして、彼女に至っては空白が多すぎる』



危険なのは芥川だけではない。
Aもまた、国木田達の警戒対象だ。
何故なら、"彼女の過去は空白が多すぎてなにも判らない"のだ。
孤児である芥川は理解できる、だが、
身なりや立ち振る舞いからもそれなりの家柄に見えるAが、
異能を操る異能という、各国の異能組織が喉から手が出るほど欲しい筈の異能者が、


『そんな稀有な異能者が、何故今まで風の噂ですら存在が知られなかった？』



疑問は尽きない。
そしてこの二人は、"入社試験を合格していない"。
慥かに事件解決は速かった。
だが、求められるのは己を律し義を貫く民護の精神、
それを揺るがないものとする高潔な人間であると認められなくてはならない。
二人は仮入社という形で、今後国木田達がそれを見極めていくのだ。


「ふん、小娘が。もう少し異能を満足に操れるようになれ」


「二つしか違わない上に、その小娘に異能を操られて投げ飛ばされたのは何処の誰？」



「怪力女め」



「だからもっと食べろって云ってるの」



「…仲良いのか悪いのか判らんなお前ら…」



「「仲良く無い」」


国木田が呆れたように眼鏡をかけなおす。
その時、カランという音をたてて喫茶店のドアが開く。
谷崎が、入ってきた人物に「お疲れ様です」と声をかける。



「遅いぞ、お前が勧誘した新人の所為で、ちょっとした騒動が起こっている」



国木田の「なんとかしろ」という声が響いた。
そんな言葉を向けられた人物は、ぽりぽりと頭を掻いて、口を開く。



「あぁ…遅くなった」



あの日と変わらない、何処かぼんやりとしたような、そうでないような表情の男性。



「…織田先輩」



この人が私の先輩、私の上司。
…それで間違いは無い筈なのに、間違っていると思うのはきっと気のせいだろう。

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