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先輩は後輩の闇に慄く ページ8

少女は珈琲についてきた砂糖を青年に押し付ける。
青年はその砂糖を無言で受け取った。



『ひょっとしてこの二人…睨んでたんじゃなくて…
元々の目つきが凄く悪くて、雰囲気が冷たいだけ…?』


青年の名は芥川龍之介、川べりで餓死しかけていたところを"あの人"に拾われた孤児。
少女の名は小泉A、同じく川べりで倒れていたところを"あの人"に拾われた。
どちらも素性は全く知らされておらず判っているのは、
芥川は衣服を変形させ操る異能者で、
Aは異能力を操る異能者であるということのみ。



「…それにしても、"あの男"は未だ来んのか」



国木田が懐中時計を見つめながら険しい表情をした。
この二人は彼が拾ってきた新人だ。
先程連絡を入れたが、後五分でつくという。


「ええと、新人の…芥川さんと小泉さん?」


あまりにも静寂が辛く、癖の強い新人二人に谷崎は恐る恐る話しかける。


「その、ええと…そうだ。
他に何か、注文したいモノとか、ある?」



「特に無い」


「お気遣いなく」


か、会話が保たない!
これが現代っ子なのか、国木田は天井を仰いだ。
谷崎もいよいよ胃痛を感じ始めた時、ナオミが口を開く。



「ところでお二人とも、探偵社に入る前は、何かされていらしたんですの?」



可憐に笑うナオミに、二人は少し考えてから口を開く。
芥川は云った、居場所もなく貧民街を彷徨いその日暮らしをしていたと。
続くように、Aは答える。


「引き取られた家での跡取り争いに巻き込まれて稽古とかの毎日…くらいです」


空気が凍る。
とんでもない地雷を踏み抜いたようだ。


「貴様、跡取りだったのか」


「いや、厳密には遠縁だけど、引き取られた夫婦に子供がいなくて。
あの家は実力さえあれば女でも当主になれたから」



Aは忌々しげに「あんなところ二度とごめんだが」と呟く。



「他人に人生を決められることほど不快なものは無いからな」


「あぁ…納得だ」


片方は貧民街の出、片方は良家の出。
まるで正反対で仲が悪い二人だが、なにか通じるものがあるようだ。


「国木田さん、どうしましょう…」



「…なんだ」



「…心が折れそうです」



新人二人の闇が深い。
なんとか会話をしようとしたが、
芥川の犬嫌いの理由や、Aの苛烈な家督争いの話を聞いて、
谷崎は「そうなンだ」しか云えなかった。

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もこすけ(プロフ) - ちょこれーとさん» コメントありがとうございます。続編が出ましたので、そちらも宜しくお願いします。これからもこの作品をよろしくお願いします。 (2019年11月9日 21時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこれーと(プロフ) - 今日めっちゃ更新多くて嬉しいです!!! (2019年11月9日 20時) (レス) id: adc186f0a4 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - azukiさん» コメントありがとうございます。一回目、そして二回目は…。今後の展開にご期待ください。読んでくださりありがとうございました。 (2019年11月4日 10時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
azuki(プロフ) - 本当の笑顔…今回が一回目で、二回目は……あー!この後の展開が楽しみすぎます!これからも頑張ってください! (2019年11月4日 8時) (レス) id: 2de50b2480 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - にゃんこさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます。そんな風に言ってもらえて嬉しいです。今後も頑張る力が出ました。これからも応援よろしくお願いします。 (2019年11月3日 9時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2019年10月14日 18時

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