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束の間の平和? ページ39

薄暗い部屋、外からの光なんて一切入らない。
それでいい、むしろそれがいいのだ。



「…大丈夫」



眠ることすら忘れ、今まで積み上げてきたのだ。
全てはあの瞬間の為、"友"の為に、そして。



「君は、何も知らなくていい」



あの約束を守る為に。
男の指が、"青紫色の石"を撫でた。



「あれから妙な接触は無いか?」



「おかげさまで」



例の異能者の接触は探偵社でもかなり騒ぎとなった。
警察を動かすほどの犯人がAに接触したのだから。
盗聴器が見つかった後、濡れ鼠となったAと芥川を発見した社員達の驚きようはすごかった。



「…何故相手は乱歩さんではなく私を選んだのでしょうか」



それが判らない、現場の推理をしたのは自分だが、大部分を理解していたのは乱歩だ。
なのに、何故。



「A、なにかあったら直ぐに云え。
力になれるか判らんが、助けることは出来る」



織田はよく頭を撫でてくれる。
多分、彼にはAが子供に見えているのだろう。



「…あと、人前で服を脱ぐのはやめた方がいい」



「人を露出趣味みたいに云うのはやめてください」



美人特有の迫力のある睨みに、織田は素直に「すまない」と謝る。



「そうだ、俺はもうすぐ出張なんだが…お前に頼みたいことがある」



織田の言葉に、Aは首を傾げた。
先輩の頼みだからと、二つ返事で了解したことを後悔するとは露知らず。



「Aさん!!」



織田との話が終わった後、後ろから勢いよく抱きついてきたのはナオミだった。
同世代の女の子に良い思い出は無いが、ナオミはとても優しい少女だと最近知った。



「最近楽しそうですね」



「…私が?」



いつも芥川と衝突して場合によっては殴り合いになっているのに?
怪訝な顔のAに、ナオミはニンマリと笑う。



「好きな方でも出来ました!?」



「はぁ!?」



「だってぇ、最近仕事終わりにいつも何処かに行ってますわよね!?」



「あぁ、それ妾も気になってたんだよ」



ニヤリと笑う与謝野が話に入ってきた。
女はこの手の話を嗅ぎつけるのが早い。



「で?好きな奴でも出来たのかい?」



あの時、なんと答えただろうか。
脳裏に浮かんでいたのは間違いなくあの人の顔。



「私は…」



今ではそれも、遠い昔の話だ。
恋もなにも知らない、無垢だった頃の、他愛もない思い出だった。

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もこすけ(プロフ) - ちょこれーとさん» コメントありがとうございます。続編が出ましたので、そちらも宜しくお願いします。これからもこの作品をよろしくお願いします。 (2019年11月9日 21時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこれーと(プロフ) - 今日めっちゃ更新多くて嬉しいです!!! (2019年11月9日 20時) (レス) id: adc186f0a4 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - azukiさん» コメントありがとうございます。一回目、そして二回目は…。今後の展開にご期待ください。読んでくださりありがとうございました。 (2019年11月4日 10時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
azuki(プロフ) - 本当の笑顔…今回が一回目で、二回目は……あー!この後の展開が楽しみすぎます!これからも頑張ってください! (2019年11月4日 8時) (レス) id: 2de50b2480 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - にゃんこさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます。そんな風に言ってもらえて嬉しいです。今後も頑張る力が出ました。これからも応援よろしくお願いします。 (2019年11月3日 9時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2019年10月14日 18時

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