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仕組まれた出会い ページ38

夕焼け色に染まる街並みを、一人の少女が乱暴に歩く。
端正な顔立ちには焦りが浮かんでいて、歩くたびに胸元の赤いスカーフが揺れる。



「…あ」



どうすればいい、追い込まれた少女は橋の上に見慣れた姿を見つけた。
瞬時にこれからすべき事を決め、彼の名を呼ぶ。



「芥川!!」



名を呼ばれた芥川は、不機嫌そうな顔で振り向く。
これからもっと不愉快なことが起こるとも知らずに。



「ごめん」



的確に、かつ時間をかけずに壊すにはこれしかない。



「は?」



その瞬間、Aは芥川の腕を掴んで、橋から身を乗り出す。
重力に従い落ちるAに引かれ、芥川も落ちていく。



ドボン!!



派手な水しぶきを上げ、二人の男女が川に落ちた。
数分後、川から上がってきたAの小脇には芥川が抱えられていた。
びしょ濡れになった芥川は、今にも飛びかかりそうな目でAを睨む。



「ゲホッ、ゲホッ…貴様ァ、どういうつもり…だ…」



芥川の声はそれ以上響かなかった。
当然だ、Aは今まさに、自身の制服の上を躊躇いなく脱ぎ始めたのだから。



「やめろ痴女か貴様!!」



白いシャツだけになったAは下着が透けるのも気にせず、黒いセーラー服の隅々まで触れる。
布の感触の中、硬いものを見つけた。



「やっぱり、あった」



襟元から取り出されたのは、なにかの機械。
それを見た芥川の目が見開かれる。



「盗聴器か」



「そう、ここに来る前に仕込まれた。事件の犯人自ら」



壊れた盗聴器をそのまま踏みつぶす。
青年にぶつかられ、立ち上がる一瞬におそらく仕込まれたのだろう。



「…目をつけられたかもしれない」



もうすぐ日が暮れる。
寒気を感じたのは、寒さのせいだけでは無いだろう。



「…チッ、切れやがった」



夕陽が差し込まぬ路地の一角、少女につけた盗聴器は壊された。
やはり気付いていたのだろう。
男は手の中にある白いハンカチを見つめる。



「やるなぁ、あいつ」



首領の命令を無視して接触したが、想像以上の化け物だった。
渡されたハンカチに血はついていない、初めから気付いていたのだ。
気づいた上で、揺さぶりをかけて逃げた。



「小泉A」



男の名は中原中也。
ポートマフィア五大幹部にして、首領の右腕。
中也は白いハンカチを握りしめ、闇に消えていった。

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もこすけ(プロフ) - ちょこれーとさん» コメントありがとうございます。続編が出ましたので、そちらも宜しくお願いします。これからもこの作品をよろしくお願いします。 (2019年11月9日 21時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこれーと(プロフ) - 今日めっちゃ更新多くて嬉しいです!!! (2019年11月9日 20時) (レス) id: adc186f0a4 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - azukiさん» コメントありがとうございます。一回目、そして二回目は…。今後の展開にご期待ください。読んでくださりありがとうございました。 (2019年11月4日 10時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
azuki(プロフ) - 本当の笑顔…今回が一回目で、二回目は……あー!この後の展開が楽しみすぎます!これからも頑張ってください! (2019年11月4日 8時) (レス) id: 2de50b2480 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - にゃんこさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます。そんな風に言ってもらえて嬉しいです。今後も頑張る力が出ました。これからも応援よろしくお願いします。 (2019年11月3日 9時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2019年10月14日 18時

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