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雑音が混じるその夢は ページ22

ザザッ…


「私は…のこ…を…し…て…」



ザザッ…



「べ…に…とめ…ん…」



ザザッ…



「でも…ひ…だけ…願い…あ…ます…」



ザザッ…



「忘れないで」



その瞬間、意識は現実へ引き戻される。



「ッ、はッ、…はぁ…!」


飛び起きた衝撃で、汗が跳ねる。
目を開けたばかりで視界はぼんやりとしているが、
窓の外から漏れる淡い光から、今が夜明け近くであることが判った。



「はぁッ…はぁッ…」



体が汗で濡れている。
火照っているような、それなのに芯まで冷えているような感覚が体を襲う。



『忘れないで』



初めてだった、あんなに生々しい夢は。



「忘れないで…」



実は、こんな夢は初めてではない。
稀に見るのだ、雑音が混じって誰が何を話しているのかも判らない夢を。
その夢は大抵、誰かがなにかを話していて、話の内容はとても聞き取れない。
だが、今日は違った。



「はっきり、聞こえた…」



忘れないでと、男なのか女なのかも判らない声ではっきりと。



「なにを…忘れているって云うの…」



夢はその人の潜在意識や、思いを表すらしい。
自分はなにかを忘れているとでも云うのか?
一度見たものは忘れない自分が。



「気持ち悪い…」



心臓が音を立てている。
これだけ目が冴えてしまってはもう眠ることは出来ないだろう。
社員寮に敷いた布団を手際よく畳み、着替えを持って風呂場へと向かう。



「大丈夫、私は忘れてなんかない、大丈夫…」



頭から熱すぎるくらいのシャワーを浴びながら、Aはずっと呟いていた。



「…朝日でも浴びて切り替えよう」


与えられた社員寮の部屋に一人でいるのが何故か嫌だった。
一人はむしろ嫌いでは無いのに。
他の住人を起こさないようにそっと部屋から抜け出し、扉を閉めた。



「流石に早く起きすぎ…」



た、を云うAの言葉はかき消された。
まるで強盗のように隣室の扉が勢いよく開き、中から出て来た芥川と鉢合わせしたからである。



「誰だ」



「はっ…?」



互いに、こんな時間に人がいるとは思わなかった。
芥川は羅生門を発動させ、Aは咄嗟に相手を蹴り飛ばしてしまった。



「「…」」



羅生門により腕から血を流したA、
蹴り飛ばされて壁に頭をぶつけ流血した芥川、
夜明け前、戦いのゴングが鳴り響いた。

一言多いと喧嘩になる→←津島修治という男



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もこすけ(プロフ) - ちょこれーとさん» コメントありがとうございます。続編が出ましたので、そちらも宜しくお願いします。これからもこの作品をよろしくお願いします。 (2019年11月9日 21時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこれーと(プロフ) - 今日めっちゃ更新多くて嬉しいです!!! (2019年11月9日 20時) (レス) id: adc186f0a4 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - azukiさん» コメントありがとうございます。一回目、そして二回目は…。今後の展開にご期待ください。読んでくださりありがとうございました。 (2019年11月4日 10時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
azuki(プロフ) - 本当の笑顔…今回が一回目で、二回目は……あー!この後の展開が楽しみすぎます!これからも頑張ってください! (2019年11月4日 8時) (レス) id: 2de50b2480 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - にゃんこさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます。そんな風に言ってもらえて嬉しいです。今後も頑張る力が出ました。これからも応援よろしくお願いします。 (2019年11月3日 9時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2019年10月14日 18時

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