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出会いと、記憶の欠片 ページ2

私は死んだ、あれほどの高さから落ちれば即死だ。



「うっ…」



「大丈夫か?」



何が大丈夫なものか、自分は死んだんだ。
死んだら、なにも感じないはずなのに。
何故、こんなにも、



「苦しッ…い…?」



腹への圧迫感で目を開ける。
ここはあの世か?
いや、それにしては目に映るのが地面であるのか理解できない。



「起きたか」



「…はぁ!?」



その瞬間、少女は盛大に声を上げた。
何故自分は俵のように担がれているのか、
何故自分は見知らぬ男に運ばれているのか、
何故自分は…生きているのか。
いや、それよりも



「離せッ…離して…!」



植えつけられた他人への不信感から、思い切り足を振り上げた。
瞬間、男はまるで判っていたかのように足を受け止めた。


「すまない、今降ろす」



男はすんなり少女を降ろすと、もう片方に抱えていたらしい青年を再び担いだ。



「行き倒れていたようだったから、つい」



「…つい?」



少女は、その男をじっと見つめる。
赤銅色の髪と、青い瞳、顎に無精髭を生やした砂色の長外套の男だった。
その表情は真剣そうに見えるが…何も考えていないようにも見える。
初めて見るタイプの人間に、つい訝しげな目をしてしまう。



「…行き倒れていたって…私が?」



「あぁ、川べりに倒れていた…何も覚えていないのか?」



「倒れていたって…だって私は…」



あの時、階段から突き落とされたはず。
夢なんかではない、ちゃんと覚えている。
背中を強く押され、世界が回るあの感覚を。



「生きてる…」




己の白い手をぐっと握る。
男はその様子をじっと見つめていた。
空がやけに赤々とした夕焼けだった、焼きつくような、赤だった。



「…助けてくれて、ありがとうございます。私の名前は…」



『助けてくれてありがとう、私の名前は…』



また、この感覚だ。
まるで一度通った道を進んでいるかのような感覚。


「…どうした?」



「…いえ、私は…私の名前は…」



少女は前を向く。



「私の名前は…小泉A。貴方は?」



雪のように白い肌と、黒檀のように黒い髪。
血のように赤い唇と深い紫色の瞳。
ゾッとするような美しさを持つ少女は問いかける。



「俺は織田作之助だ」



この出会いは運命か、それとも仕組まれたものか。

織田作之助という男→←序章



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もこすけ(プロフ) - ちょこれーとさん» コメントありがとうございます。続編が出ましたので、そちらも宜しくお願いします。これからもこの作品をよろしくお願いします。 (2019年11月9日 21時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこれーと(プロフ) - 今日めっちゃ更新多くて嬉しいです!!! (2019年11月9日 20時) (レス) id: adc186f0a4 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - azukiさん» コメントありがとうございます。一回目、そして二回目は…。今後の展開にご期待ください。読んでくださりありがとうございました。 (2019年11月4日 10時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
azuki(プロフ) - 本当の笑顔…今回が一回目で、二回目は……あー!この後の展開が楽しみすぎます!これからも頑張ってください! (2019年11月4日 8時) (レス) id: 2de50b2480 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - にゃんこさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます。そんな風に言ってもらえて嬉しいです。今後も頑張る力が出ました。これからも応援よろしくお願いします。 (2019年11月3日 9時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2019年10月14日 18時

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