【文スト】この世界と番外編 その十五

太宰兄と小泉母 ［姫歌様リクエスト］ ページ39

(こちらは姫歌様の『兄弟 戦争』のコラボ作品となっております。コラボ、ありがとうございました)






「本当に似ているねぇ」







「あら、それは貴方もですよ。本当に瓜二つ」







「まあ、双子だしね」








「私も親子らしいですからね」








うふふクスクスと笑う見目麗しい二人の男女。
一人は鳶色の瞳と柔らかな髪が特徴的な、端正な顔立ちの男。
一人は長い黒髪と紫の瞳が目を惹く美しい女。







「…ところで、一ついいかな？」







「どうぞ」








「さっきから貴女椅子になっているその屈強な男は僕の見間違いかな？」







「あら、幻想ですね。きっと見間違いですよ」







「そっか、なら納得だ」








男はやけに納得したように視線をあげた。
女もまるで椅子に腰掛けるように足を組み直す。
ここが人目のない場所で無かったら大惨事だったであろう。







「まあ、私に襲いかかってきたお莫迦さんをお仕置きしただけですから」








「それはそれは。お互い大変だね」








「まったくです」








十中八九、この男は女に向けられた暗殺者なのだろうが、
今は無残に縛られ、見る影も無い。
だがそれ以上に、暗殺者を椅子にしながら天使のように笑う女もかなり危ない。
男は「娘さんもそんなことするのかなぁ」と肩をすくめて笑う。







「雪さんも相変わらずだね」









「あら、太宰さんも相変わらずのようで」








「僕は兄の方だけどね」








「うふふ、見間違いそうなくらい似てますね」







「それは貴女もだよ。生き写し、いやそれ以上に似ているよ」








男、太宰は女、雪の方を見て笑う。
この太宰、一見すると探偵社にいる太宰治に見えるが実は違う。
彼の双子の兄で、瓜二つの容姿を持った別人なのだ。
そして女の方も。
彼女は探偵社の小泉Aに見紛う程似ているが、
実は彼女は過去から来たAの母親なのだ。
他人が見れば太宰(弟)とAだと思うだろう。








「…ちょっと悪戯してみませんか？」









「…悪戯と云うと？」








「うふふ」







「その綺麗な笑みが怖いなぁ」








「それで、お返事は？」








太宰はにっこりと笑い、雪と目を合わせた。








「やろう」







「そう来なくては」








「最近びっくりする程退屈だったから」








「退屈は良く無いですからね」









こうして、天才二人による被害者多数の悪戯という名の惨劇が始まる。

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