【文スト】この世界と番外編 その十五

人狼ゲーム ［ナツロ様リクエスト］ ページ12

机の上に広げられた数々のカード。
占い師、霊能者、騎士…様々なカードの中で一際目を引くのが、
大きな口を開けた狼のカード。







「人狼ゲーム？」






「そ、人狼ゲーム」







それは、暇を持て余した社員が何かのゲームをしようということで始まった。
そこで、なにかを思い出したようにナオミが持ってきたのが人狼ゲームの道具だった。







「これ、相当頭使うみたいだから良いんじゃない？」








ルールはシンプル。
市民サイド、人狼サイド、そして妖狐サイドに分かれる。
市民は昼の会議の投票で怪しい者を一人、追放する。
夜になると人狼は一人、人狼でない者を襲撃し、殺す。
これを繰り返して最終的に市民サイドが人狼を全滅させれば市民サイドの勝ち。
市民サイドと人狼サイドの数が同じになった時点で人狼サイドの勝ちとなる。







「…これ、太宰さんの独壇場にならない？」







「そこに乱歩さんも含まれると地獄だ」







こそっと耳打ちをする敦にAはそう答えた。
とんでもない頭脳戦、しかも何処ぞの包帯が得意なジャンルだ。







「A、アンタもやんなよ」







「いや…でも…」








「賞金十万だよ」








「今なんて？」









「勝ったチームに十万」








敦が椅子から転げ落ちた。
Aは眉間を押さえた。







「これは責任重大ですね」








「妾はやるよ、あ、脱落者は治療とかどうだい」







「すみませんそれは、それだけは」








かくして、探偵社員全員参加の人狼ゲームがスタートした。
参加者は太宰、国木田、敦、A、鏡花、与謝野、乱歩、賢治、谷崎兄妹の十名。
役職は、市民、占い師、霊能者、騎士、恋人、妖狐、そして人狼、狂人。
客人用のテーブルを繋げ、十人が席に着いた。







「じゃあ、カード配りますよー」







司会の春野がカードを一枚ずつ社員に配っていく。
伏せられたカードを見つめ、指先に触れさせる。
カードを見るのは直ぐで無くても構わない。







『ゲームをやったことは無いが、
役職持ちを見つけるのが先かな…』







カードを顔の前に掲げ、そっと仲間に視線を移す。
恐らく最も顔に出るであろう敦は難しい顔をし、
国木田は何処か苦い顔している。
一人ずつ、見逃さないように見ていく。







『さて、私の役職は…』








すべて終わり、自分のカードに目を移し、そしてそっとそれを置いた。
面白くなりそうだと、笑わないように耐えながら。

＊→←＊

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す