二百七十五話 ［垣間見える別の顔］ ページ27
条野と鐵腸のおかげで、探偵社の行く先が天空カジノだと判明した。
そこへ副長である大倉��子と立原道造が派遣された。
「あんなとこに探偵社が…」
空高くに浮かぶ、巨大な施設。
それを見下ろして��子は「阿呆のような建築物じゃな」と呟いた。
大戦直後に建設された高空浮遊施設であり、
どの国にも属さない謂わば独立国家。
「ここでテロを起こされたら…物理的にも政治的にも最悪の事態じゃのう」
仮にでもこの施設が浮遊能力を失い、落ちればその下は地獄となる。
立原は探偵社が潜んだそこを睨むように見つめた。
『…それにしても、彼奴が《魔女》、か…」
立原の脳裏に浮かぶ、紫の瞳の少女。
黒蜥蜴としてマフィアにいた時、探偵社襲撃に際し窓から突き落とされた。
まるで無機物を見るような目は暫く忘れられず、
今も焼き付いて離れない。
『彼奴ならあり得る。
あの冷たい目、間違いなく《魔女》のそれじゃねぇか』
でも、本当にそうなのだろうか？
『本当に彼奴は、"そういう部類"の人間なのか？』
闇に向いた本質の少女。
だが、本当にあの少女はそれだけなのか？
ーそんな奴が赤の他人を助けたりするのかー
ー身の上に同情しただけの餓鬼を救おうとするのかー
ーヨコハマを守る為に己の命すら賭けようとするのかー
探偵社といるときに見せる、あの穏やかな眼差しは嘘なのか？
『いや、なに考えてる。今はそんなの関係ねぇだろ』
でも人質事件の現場にAは居なかった。
彼女は軍警から逃げる際も決して彼らを殺そうとしなかった。
「チッ…なんなんだよ」
��子に気づかれぬように、髪を乱す。
自分は猟犬で、相手は犯罪者、しかもAは政府の因縁の相手。
それだけで十分なのに。
『お…父さん…ごめ…ん、ごめんなさ…』
中也の部下のミスで重傷を負わされマフィアに捕まった時、
見張りをしていた立原は意識がない彼女の声を慥かに聞いた。
懺悔するような、哀しげな声。
兄を亡くした自分と重なってしまう。
まるで同じ痛みを背負った者同士のような。
「立原、何をぼさっとしておる。もう間もなくじゃぞ」
��子の言葉にハッとする。
莫迦な事を、敵に同情するなどあってはならない。
「彼奴は、《魔女》なんだ」
云い聞かせるように、軍帽を深く被った。
自分の信念を守る為に、剣を握る。
二百七十六話 ［この王国の支配人］→←二百七十四話 ［白雪姫の真実］
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さんしょくだんご(プロフ) - この作品の中の文章の数々に心をうたれました。素晴らしい作品を本当にありがとうございます (7月24日 1時) (
レス) @page49 id: 9ce43d97c3 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 田中りんさん» コメントありがとうございます。小泉は「これすごく便利では」と思い、喜んでいました。某幹部さんは爆発した瞬間、元相棒の仕業だと気づきました。メリークリスマス、そして良いお年を。 (2020年12月25日 19時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
田中りん(プロフ) - 初コメ失礼しますー 銃で喜ぶ小泉ちゃん…私もエアガンとか大好き人間なので人のこと云えない…某幹部さんは完全なるとばっちりですねwwメリークリスマス＆良いお年を！！ (2020年12月25日 0時) (レス) id: 59051e49c3 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - まっちょりさん» お久しぶりです。楽しみに待っていてくださりありがとうございます。皆様を楽しませることができる続編をかけるように頑張ります。応援よろしくお願いします。 (2020年12月18日 23時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 雪月さん» お久しぶりです。待っていてくださりありがとうございました。20巻は驚きの嵐でした。 (2020年12月18日 23時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もこすけ
| 作成日時：2019年5月18日 18時
