二百七十六話 ［この王国の支配人］ ページ28
世界各国の富裕層が集まる、金と欲望が美しく彩られた空間、天空カジノ。
「カジノを閉鎖しろ、だと？」
そこの王である男、シグマは端正な顔を歪める。
先程まで支配人自らディーラーを務めていた彼は、
突然自分の王国に侵入してきた猟犬に良い顔はしなかった。
「うむ、この施設にはテロリストが潜入しておる」
��子が持ち込んだ写真をシグマが目にする。
そこには赤毛の綺麗な少女が写っていた。
「其奴はテロリストの仲間じゃ、『部屋』の異能で一味をカジノ内に運び込んだ。
そのうちの一人は世界中の異能機関が血なまこになって探している者じゃ」
モンゴメリの異能で入り込んだ彼らは捜索部隊では見つけられない。
ではどうしろと、と問うシグマに��子は答えた。
「カジノを封鎖する」
そうすれば、彼らは部屋から出てくる。
慥かに筋の通った作戦だ。
しかし、"彼"は険しい顔つきで返答した。
「断る」
「…何じゃと？」
シグマからしたら、それはとんでもない行為だった。
大規模な封鎖を行えば、今まで築いた信用、莫大な収益を一度に失う。
カジノは彼にとって命そのもの、封鎖など以ての外だった。
「…テメェ、今がどういう事態か判ってんのか…。
あの中にいる奴は、あの《魔女》の血縁者なんだぞ！」
「…《魔女》、だと？」
シグマの顔が一瞬曇る。
だがそれは一瞬の事で、彼は次の瞬間には厳しい顔つきに戻った。
「無論、判っている。
警察の力など不要だという事がな」
シグマがパチンと指を鳴らすと、部屋に屈強な男達が入ってきた。
彼らの手には見慣れない拳銃が握られている。
異能者用に作られた拳銃、そしてそれを握るのは訓練を積んだ専門家達。
銃口を向けながら、シグマは云った。
「…政府に、楯突く気か」
��子の声は恐ろしく低い。
空気が張り詰める中、シグマは呆れたように肩を竦めた。
ここはどの国にも属さない独立国家。
支配人が法であり、刀も警察権力も違法だと。
「客として金を落として帰るならよし。
さもなくば….今すぐ、消えろ」
不遜とも取れる態度に、立原は詰め寄る。
だが、彼は気づいてしまった。
「貴様…儂に消えろと云ったか？」
��子が、とんでもなく恐ろしい殺気を発している事と、
今後起こるとんでもない事に。
二百七十七話 ［チェスの駒を動かす］→←二百七十五話 ［垣間見える別の顔］
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さんしょくだんご(プロフ) - この作品の中の文章の数々に心をうたれました。素晴らしい作品を本当にありがとうございます (7月24日 1時) (
レス) @page49 id: 9ce43d97c3 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 田中りんさん» コメントありがとうございます。小泉は「これすごく便利では」と思い、喜んでいました。某幹部さんは爆発した瞬間、元相棒の仕業だと気づきました。メリークリスマス、そして良いお年を。 (2020年12月25日 19時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
田中りん(プロフ) - 初コメ失礼しますー 銃で喜ぶ小泉ちゃん…私もエアガンとか大好き人間なので人のこと云えない…某幹部さんは完全なるとばっちりですねwwメリークリスマス＆良いお年を！！ (2020年12月25日 0時) (レス) id: 59051e49c3 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - まっちょりさん» お久しぶりです。楽しみに待っていてくださりありがとうございます。皆様を楽しませることができる続編をかけるように頑張ります。応援よろしくお願いします。 (2020年12月18日 23時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 雪月さん» お久しぶりです。待っていてくださりありがとうございました。20巻は驚きの嵐でした。 (2020年12月18日 23時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もこすけ
| 作成日時：2019年5月18日 18時
