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二百七十三話 [借りと、神々の国の首都] ページ25

アンの部屋に安吾の声が響く。


「今回の潜入作戦の目標は『第三段階』テロの阻止。
及び、『頁』の奪還です」



だがお尋ね者である探偵社員は大っぴらに動けない。



「そこで、彼女の能力です」



モンゴメリの自信ありげな笑みには理由がある。
彼女の異能で作られた『アンの部屋』にはモンゴメリが選んだ者しか入れない。
その部屋を格納庫とすれば敵に気づかれずに進入が可能となるのだ。



「彼女は未だ政府に捕捉されていない為、通報される恐れもありません。
つまり…彼女が作戦の『心臓』です」



そして、もしもの時は彼女を守ることが最優先事項となる。
Aの太もものホルスターが、やけに重い音を立てた。



「…ごめん」



ふと、敦がモンゴメリに申し訳なさそうに謝る。
今自分たちに協力することは重犯罪と知っているから。
巻き込んでしまったという自責の念が募る。
だが、モンゴメリは「返しきれない借りが出来た」と云う敦に不思議そうな顔をした。



「返しきれない位の大きな借りを今返しているのはあたしの方でしょ?」



敦とモンゴメリが互いに「え?」と声をあげる。
すると彼女は自分が今相当恥ずかしい事を云ったと気づいたようでみるみる顔を赤くさせた。



「ナシナシ!今のナシ!!」



色恋沙汰に鈍いAでも、モンゴメリの敦への想いがなんとなく理解できた。
恩に報いたい、だから彼女は手を貸したのだ。



「坂口参事官補佐、最後にひとつ、聞いてもよろしいでしょうか」



「…構いません」




Aは静かに安吾を見据えた。




「私の異能は『異能力を操る異能』…では無いのでしょうか」



その言葉に、敦達の顔には衝撃が走る。
神々の国の首都が違う異能力だと云う事実に少なからず驚いていた。



「…はい、僕は少なくともそう考えています。
詳細は判りませんが…異能力の全貌が当人の知るものと異なることは稀にあります」



「…そうですか、それだけでも知れて良かった」



少なくとも、今はそれで良い。
安吾は腕時計を見て、時間です、と呟く。



「ふー…じゃ、行くわよ」



落ち着きを取り戻したモンゴメリが指をパチンと鳴らす。
アンの部屋に転送された三人に待つのは、大きな試練。
モンゴメリは彼等を運んでいるという責任を感じながら、路地から出てタクシーを呼び止めた。




「飛行バス発着場まで!」




目指すは、天空の独立国家。

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さんしょくだんご(プロフ) - この作品の中の文章の数々に心をうたれました。素晴らしい作品を本当にありがとうございます (7月24日 1時) (レス) @page49 id: 9ce43d97c3 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 田中りんさん» コメントありがとうございます。小泉は「これすごく便利では」と思い、喜んでいました。某幹部さんは爆発した瞬間、元相棒の仕業だと気づきました。メリークリスマス、そして良いお年を。 (2020年12月25日 19時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
田中りん(プロフ) - 初コメ失礼しますー 銃で喜ぶ小泉ちゃん…私もエアガンとか大好き人間なので人のこと云えない…某幹部さんは完全なるとばっちりですねwwメリークリスマス&良いお年を!! (2020年12月25日 0時) (レス) id: 59051e49c3 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - まっちょりさん» お久しぶりです。楽しみに待っていてくださりありがとうございます。皆様を楽しませることができる続編をかけるように頑張ります。応援よろしくお願いします。 (2020年12月18日 23時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 雪月さん» お久しぶりです。待っていてくださりありがとうございました。20巻は驚きの嵐でした。 (2020年12月18日 23時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2019年5月18日 18時

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