検索窓
今日:4 hit、昨日:11 hit、合計:735,019 hit

4話 ページ6

どのくらい時間がたったのだろうか。気がつくと6時になっていた。

「ただいまーAー」

玄関から母の声がした。彼女は下の階へ降りていく。

玄関には仕事着に身を包んだ母親の姿があった。

「お帰りなさい。お母様」

彼女は母に向かって微笑む。

そこには先ほどまで卑屈な笑みを浮かべていた藍澤 Aの姿はなかった。

優しく微笑むその姿は母親が望む優しい娘そのものだった。

「お仕事お疲れ様です。」

母はそんな娘の姿が偽りだということを疑うわけもなく娘に向かい微笑む。

「待ってて。すぐに夕食作るからね」

母は笑顔で台所に向かう。

そんな母親の姿をまるで無機物でも見るような瞳でAは見つめた。









夕食が出来上がり二人で食べる。

「今日はビーフシチューよ。美味しい?」

Aは母の問いに笑顔でこう言った。

「はい。お母様が作る食事はとても美味しいです。」

Aが美味しそうに口にビーフシチューを運びながら言うと母は嬉しそうに笑顔を浮かべた

「Aがそう言ってくれると嬉しいわ」

母もビーフシチューを口に運ぶ。

楽しそうに笑う母と娘。その姿はまさに世間が憧れる様な親子図だった。









しかし、母は心のそこから嬉しそうでもAの本心は違った。

『本当に私の事何も知らないんですね』

Aは母が作るビーフシチューの肉が筋っぽくて嫌いだった。

『いい母親ずらしないでください』

娘の本性を知らない母親。母親を母親として見ようとしない娘。

『所詮は偽りの親子………』

彼女は母に微笑みながら心の中でそう思った。














「ごちそうさまでした。今日もとてもおいしかったです」


笑顔で手を合わせるA。母は嬉しそうに微笑む。

食器を片付けると、Aはトイレへと向かった。









「っ……………カハッ………」


さっき食べたばかりの夕食を便器へと吐き出す。

何度も何度も吐く。


「う………気持ち悪い……………」









収まったと思ってもまた込み上げてくる吐き気。

結局夕食を全て吐いた。

吐き気を抑えながら彼女はポケットに忍ばせておいたカロリーメイトを食べた。

5話→←3話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (340 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
635人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ありんこ(プロフ) - めっちゃおもしろいです!!緑間と仲いいですね!!笑笑更新頑張ってください! (2015年5月31日 17時) (レス) id: 4d2c2a19e6 (このIDを非表示/違反報告)
ミドリン - 藍澤ちゃんのちょっとひねくれた性格が良い!!スッゴく楽しみにしてます!!これからも頑張ってください! (2015年5月30日 20時) (レス) id: 8c21d6e656 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 直しました。ありがとうございました! (2015年5月24日 15時) (レス) id: 0a25db78c6 (このIDを非表示/違反報告)
橙乃かりん(プロフ) - もこすけさん» 才色兼備は美しさという意味も含んでいるので容姿端麗では重複してしまうかと・・・・上からみたいですみません。 (2015年5月24日 13時) (レス) id: c45918c086 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 眉目秀麗を容姿端麗に直しました!ご指摘ありがとうございます! (2015年5月22日 19時) (レス) id: 0a25db78c6 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:もこすけ | 作成日時:2015年4月6日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。