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ページ23

敦の話はそれなりに怖かった。
孤児院でそこそこ仲が良かった子が、実は孤児院に在籍すらしてなかったという、
ある意味ありきたりな話だったがそれなりに体が冷たくなった。






「…これ結構雰囲気でるね」







「ふ、ふん…そうでもないな…」






「国木田さん、どうでもいいことかと思いますが、毛先、引火してます」







「は!?」







平坦な声で告げられた引火発言の通り、国木田の毛先に小さな火がついていて、国木田の悲鳴が上がる。
そんな国木田にAは手元にあったバケツの水を躊躇いもなくぶっかけると、
敦に「話終わったら蝋燭の火、消して」と指示する。
ちなみに国木田はずぶ濡れだ。







「じゃあ次は…時計回りで行こうか」







今ひとつ話をしたので残りは九十九話。
数人でやるなら大変だがこの人数なら数巡すれば終わるだろう。







「あ、次私か」






「Aちゃんは最後の最後にしよう。次行くよー」






さりげなく飛ばされ、Aは眉間に皺を寄せた。
話させてなるものか、こいつの怪談は洒落にならない。
いつぞや、探偵社で披露した話は本当に怖かった。
幼少期に体験した、屋根裏に人では無いナニカがいるという話を聞いた時ほど
暗闇を見つめている時、暗闇もこちらを見つめているという表現を思った時はない。






「これは私が十七の時…小人と会った話だ…。
小人の車に蛇を入れた私はその小人に…」







「おいちょっと待て手前、それ手前が十七ん時俺の車に蛇入れて殺し合いになった時の話だな」







「うわ…」







太宰のしょうもない話を聞かされたり、
それ怪談か?と聞きたくなるほど怖くない話もあった。
紅葉や与謝野辺りの話はなかなか怖かったが、芥川の話はエグかった。
一人一人話をして、蝋燭は気づけば残り一本になっていた。
つまり、こいつの出番だ。






「いいかA、怖くないものだぞ。
いや、云い方を間違えた、幼児でも『なにそれー』と笑えるレベルの怪談だ」






「それ怪談ですらないのでは…」






「さもなくば今後探偵社とマフィア、双方の仕事に支障が出る」







国木田の懇願、そして心なしか震えている者達を見て、Aはふむと考え、
ちょうどいいのを思い出したのか、居住まいを正した。






「これは怪談ですらありません。…私が体験した不思議な話です」








その語り方から冷たいものを感じ、誰かの唾が飲み込まれた。
そして、始まる。

*→←探偵社とマフィアの百物語 [瀬那様リクエスト]



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もこすけ(プロフ) - nino=sakuさん» コメントありがとうございます。怪談、いかがでしたか。実際に遭遇したくはないですね…。 (2019年3月26日 18時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
nino=saku(プロフ) - 主人公の怪談夜中に読んでたので普通に怖かったですw (2019年3月26日 0時) (レス) id: 2561bedadd (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 凛さん» コメントありがとうございます。わざわざ有難いお言葉感謝します。もう少し続きますので、お楽しみに。 (2018年12月7日 23時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
- リクエスト受けてくださって本当にありがとうございます!作品とても楽しみです! (2018年12月7日 14時) (レス) id: 9fddac5d14 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - みぃちゃん,mさん» コメントありがとうございます。小泉のボーカル、見たいてますね。これから登場しますので、お楽しみに。 (2018年12月7日 10時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2018年10月28日 18時

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