【文スト】この世界と番外編 その八

呪われた人形と除霊(物理) ［ヒカル様リクエスト］ ページ11

カタカタと社内にキーボードの音が響く。
その日は比較的穏やかで、太宰が仕事をサボって国木田に締め上げられている事以外は平和だった。
だがそれは突然崩れ去る。
誰かが階段を凄まじい勢いで駆け上がってくる音がして、Aは手を止めた。






「おい！！A居るか！？」







バァンと大きな音と共に扉が開く。
沈黙、そして大多数の者が訪問者の顔を見て立ち上がった。
Aは息を切らして飛び込んできた人物を見て、一言。






「居ますけど…アポ取ってください中也さん…あと芥川」





ジュラルミンケース片手に飛び込んできた中也はAの顔を見て息をついた。
取ってつけたように名前を呼ばれた芥川は眉間にしわを寄せる。






「手前に頼みたいことがある」






「私に？」






戦闘態勢に入りつつある社員達には目もくれず、中也はケースをAに渡した。
不審に思いつつ受け取った瞬間、嫌な寒気がして、中也の顔を見た。






「最近、マフィアで変な現象が多発してる原因だ。
"それ"に関わった奴の殆どが正気を失ったり死んだりしてる。
…手前の得意分野のやつだよ」






Aにしか頼めない、変な現象、得意分野。
そこから考えられるのは、心霊現象。
常人の倍の霊感を持つAに、解決を依頼しにきたのだ。
内容を察したAは険しい表情になる。






「…拝見しても？」






「あぁ」







マフィアを騒がせるもの、そう認識した社員達は気になるのか視線をケースに落とす。
Aはそれを慎重に机に置き、ケースを開けた。







「…」







そして、無言で閉めた。
再び丁寧にロックをかけると、それを静かに中也に渡す。
そして、若干引きつった唇が言葉を紡いだ。






「弊社では対応しかねます」






驚くほど白々しい台詞だった。
クレーム対応をする窓口のような、感情の消えた声に中也はマジか、と口を開ける。







「おいおいそりゃあねぇだろ！！」







「どうにかしろ、さもなくば人虎を殺す」







「無理、この話は終わり」






はいはい解散、と早々に逃げようとするAに、中也は低い声で告げた。







「被害者は判ってるだけで二十三人。
…そのうちの一人がQだって云ったら手前はどうする？」







ピタリと、Aの動きが止まった。
ゆっくりと中也の方を見て、その目に偽りがないことを悟る。







「…詳しく聞きましょう」








そう云ってAは応接室を指差した。

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