【文スト】この世界と番外編 その八

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応接間に通されると、ケースを真ん中に、Aと向かい合う中也と芥川。
Aの後ろでは太宰と敦がやたら張り詰めた空気で立っている。






「二週間前、ある組織の拠点から出てきたモンだ」






中也は語る。
それからというもの、マフィア本部の廊下、倉庫、果ては首領の部屋で落ちているようになった。
勿論処分はした、でも戻ってくるのだ。







「その…人形がな」







中也が指差す先には、ケースに入られた人形。
女の子をモチーフにした、古い人形だった。






「次に変なことが起こるようになった。
窓硝子が割れたり、銃が誤作動を起こしたりな。
そして…次に構成員に異常が起こるようになった」






誰かに見られている、変な声が聞こえる、初めはその程度だった。
だが次第にそれは強くなり、果てはおかしくなる者や、命を絶つ者も現れた始めた。
今までにない事態に首領は原因を調べさせたところ…この人形が原因だと判明した。







「二十三人の被害者のうち、死者は八人。
…俺と芥川も最近その人形にやられた」







Aが苦いものを噛んだような顔をする。
普通の人間には判らないだろうが、この人形は異様だった。
怨みとか、未練とか、そういうものが詰まっている。






「…私にどうにかしろ、と」






「思い当たるのが手前しか居なかったんだよ」






「マフィアが怪奇現象で探偵社に依頼なんてとんだ茶番だねぇ。
その手の職の人に頼んだ方が良いんじゃない？」






太宰のおちょくりに中也は青筋を浮かべる。
だが彼の言葉も筋が通っていた。
Aは視える、聞こえる、感じ取れる体質だが、祓えない。






「解決の、しようがありません」






その言葉に中也は険しい顔をし、芥川も舌打ちをした。
残念だが、出来ないものはできない。
諦めをにじませ、謝ろうとした時。






「Qは、半狂乱になってて今は薬で眠ってる。
…どうにかしねぇとあいつも…っておいおいなにしてる！！」







「滅する」







Qの話題が出た途端、人形にナイフを振り上げるAを中也が必死で止める。
その目はガチで、先ほどの哀愁は微塵も感じない。







「存在を消してやる、人形風情が」







ナイフを静かに下ろしたAは荒々しく部屋から出て行き、しばらくすると戻ってきた。
その手には与謝野の鉈やら散弾銃やら塩酸やらが握られており、
四人の頭の中で"除霊(物理)"という単語が浮かんだ。

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