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縛られた両手はとても解けるようなものではなく、思わず「ちょっと待て、これどこで習った」と聞きたくなる。
いや、今はそんな悠長な事云ってられない。
「待て、落ち着け、今ここで私を殺すのならまず与謝野先生を」
「殺す?そんな事しないよ」
てっきり喉を掻き切られると思っていたAの目は点になる。
それを見て太宰はクスリと笑った。
「お姉さんは天使に会えたの?」
「…は…」
「あれはまるで天使に巡り会えたような口ぶりだった。
貴女は天使に救われたんでしょう?」
天使と云われ漸く太宰の言葉の意味を理解する。
あれか、あの話か、だが何故その話を。
「なんでその話…?」
「あぁ、判らない?なら教えてあげようか」
ひたりと頬に太宰の手が置かれた。
その目に浮かぶのは、愉悦。
「貴女が僕の天使になってよ」
紫色の目が見開かれる。
その様子を太宰は楽しそうに見つめる。
「思ったんだよ、貴女なら僕を救ってくれんじゃないか…
酸化していく世界で僕の天使になってくれんじゃないかって」
あ、まずい。
本能的にこれ以上は行かせてはいけないと感じた。
「見つけた、僕の天使」
駄目だ、これ。
このままじゃいけないと体を捻るが、なぜか動かない。
「無駄だよ、力が入らないところ押さえてるから」
やりやがった。
そんな暴言も出ないほど追い込まれていた。
「ま、待って、本当に待って」
「やだ、待たない」
ニッコリと黒い笑みを浮かべた太宰が顔を近づけてくる。
そして耳元でそっと囁いた。
「僕、貴女のことが…」
駄目だこれは笑えない。
そう判断した次の行動は速かった。
「敦ィィィィ!!」
「!?」
同じ寮に住む同僚の名を呼べば数秒後には焦り顔の敦と、付き添いの鏡花が飛び込んでくる。
「縛れ!今すぐ!!」
「これは…事案!?」
「事案!!」
食われる数秒前、それを理解した鏡花は敦より先に動く。
太宰の首に手刀を落とし、気絶させる。
「だ、大丈夫?」
「…コドモコワイ」
その後、Aは敦と部屋を交換し、鏡花と共に寝た。
翌朝、元に戻った太宰は全身を縛られて目が覚めたらしい。
暫くAは太宰の顔を見ると逃げるようになったとか。
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もこすけ(プロフ) - 有栖さん» リクエスト承りました。嬉しいお言葉ありがとうございます。 (2018年8月13日 6時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
有栖(プロフ) - リクエストです。薬か何かで小泉ちゃんが5歳くらいになって、武装探偵社で天然笑顔や、寂しがり屋を披露して太宰さんの事をお兄ちゃんって呼ぶって感じのお願いします!!!!!多めですみません!この作品めっさ好きです! (2018年8月12日 23時) (レス) id: e65e94b2de (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - ゼロレールさん» リクエスト承りました。わざわざコメントありがとうございます。感謝します。 (2018年8月6日 22時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
ゼロレール(プロフ) - リクエストいいでしょうか?以前にやった幼い太宰さんの逆トリと同じで、幼い中也さんの逆トリお願いします。後、前回コメントができず、すみませんでした。リクエストは無理でしたらスルーでも構いません。よければ宜しくお願い致します。 (2018年8月6日 22時) (レス) id: 3e587b9082 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 千晴さん» こちらこそありがとうございます。 (2018年8月6日 17時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もこすけ | 作成日時:2018年7月22日 21時