【文スト】この世界と番外編 その四

＊ ページ19

女子会は酒の空気が入り、かなりごちゃごちゃしたものに変貌を遂げた。







「芥川先輩にまた怒られたんですぅ〜！」







「樋口一葉さん、弱いなら酒やめよう。顔真っ赤だけど」







「私のどこがいけないんですか〜教えてくださいぃぃ」







「泣き上戸になるから飲むのやめろ」








酔った樋口に水を飲ませ、部屋の隅に放る。
銀があわあわと倒れた樋口を介抱していた。
樋口の世話が終わった瞬間、後ろから肩に手を回される。
相手は紅葉だった。







「それで、お主の初恋はいつじゃ？」







「は」







「妾も気になるねぇ、吐きなA」







「ナオミも気になりますわ！」








「私も」







また面倒なことになった、と小さく息を吐いた。







「初恋なんてまだだけど」







「…これが年頃の娘だと思うと泣けてくるのう」







「余計なお世話だ…。
それに、昔は周りにまともな相手がいなかったから」







「Aさん…それは…」








「告白されたことはあるけど内容も『貴女の犬にしてください』とか
『その足で思い切り踏みつけてください』とかそんなふざけた手紙ばかりだったし」








「予想の遥か上を行きましたわ」








「当時は相談できる友達なんていなかった…でも今は違う」







今は、一人じゃない。
ちゃんと仲間がいる。








「でも今は楽しいしこうして話せる人もいる」







グラスの中の氷を揺らしながらそんなことを口にする。
今は本当に縁に恵まれた環境にいると思う。
こんな風に同性と話せる日が来るとは思っていなかった。







「今は、それが楽しいから」








「Aさん！」







いきなりナオミに抱きつかれ、よろけた。
流石兄を締め上げている技、油断ならない。







「私達お友達ですわ！なのでなんでも相談してください！」






「私も、相談して」







「はぁ…アンタ変なのばかり引っ掛けてくるねぇ」







「ふふ、お主らしいのう」






ナオミに抱きつかれ、鏡花に服の裾をちょいちょいと引っ張られる。
それがなんだか憧れていた女子同士のじゃれ合いのようで少し暖かい気持ちになる。






「さて、今夜は色々聞かせてもらうぞ。
さっきの手紙の内容もきになるからのう」






「…お手柔らかに」







女子会はまだまだ続きそうだ。
呆れつつも楽しんでいる自分に気づいたAは少しだけ笑った。
こうして、乙女達の夜は更けていった。

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