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「…ん」
気づくと、眠りから覚めていた。
随分長い間眠っていた気がする。
『治った』
そこで今枕にしているのは人の足だと思い出し眼を開けた。
そして、
「はっ!?ッいた!」
ベンチから転がり落ちた。
もろに顔面から落ち、しばらく痛みに悶絶する。
ベンチに座っている男性の顔を確認し、再び小さく悲鳴をあげた。
「りょ、猟犬部隊…条野採菊…」
恐らく眠っているであろう男は、あの猟犬部隊の条野採菊だった。
恐ろしく整った顔に、Aはサァッと顔から血の気が引くのを感じた。
「今まで私はこの人の膝の上で寝てたのか…!」
遠回しに「お前敵だから殺しちゃうぞ☆」的なことを云われた相手の上で寝ていた。(詳しくは本編へ)
それだけで体温が数度下がった気がする。
「はぁぁぁ…びっくりした…」
未だドキドキと五月蝿く鳴る心臓を押さえる。
そこで漸く空が紅くなっていることに気づいた。
そして、もうなにも視えないことにも。
「夕暮れ…ッて今何時!?」
急いで携帯を取り出し、時刻を確認する。
午後五時半、完全に夕暮れ時である。
そして、凄まじい量のメールと着信履歴に気づいた。
「無断欠勤…」
まずい、非常にまずい。
早く戻らないと国木田に怒鳴られる。
いや、もう確定だろう。
「…とりあえず戻らないと」
立ち上がり、服を整え帰ろうとする。
が、すぐに足は止まり、視線は眠る条野の方を向いた。
「…助けてもらったお礼はしないと」
数分後、近くの店で買ってきたものを条野の周りに置き、そのまま公園を後にした。
そして社に戻ったが当然怒られた。
熱中症になりある人に助けてもらったと云えば、与謝野が治療してやると云い、反抗虚しく医務室に連れて行かれた。
外傷じゃないのに、と最後まで叫んで。
「…なんですかこれ」
この暑さの中、何故か冷たさで目を覚ました条野は自身を取り囲むようにして置かれたものを一つ手に取る。
「何故大量のドライアイスとアイスが…?」
ドライアイスの山の中からアイスが出てきた。
恐らく犯人はあの少女なのだろうがお礼の仕方が斬新すぎる。
「…半分溶けてますが、受け取っておきます」
街で会った時は死にそうな鼓動が戻ったのなら良い。
そう呟き、条野は半分溶けたアイスを口に入れた。
何処かで涼しげな鈴の音がした。
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もこすけ(プロフ) - 有栖さん» リクエスト承りました。嬉しいお言葉ありがとうございます。 (2018年8月13日 6時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
有栖(プロフ) - リクエストです。薬か何かで小泉ちゃんが5歳くらいになって、武装探偵社で天然笑顔や、寂しがり屋を披露して太宰さんの事をお兄ちゃんって呼ぶって感じのお願いします!!!!!多めですみません!この作品めっさ好きです! (2018年8月12日 23時) (レス) id: e65e94b2de (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - ゼロレールさん» リクエスト承りました。わざわざコメントありがとうございます。感謝します。 (2018年8月6日 22時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
ゼロレール(プロフ) - リクエストいいでしょうか?以前にやった幼い太宰さんの逆トリと同じで、幼い中也さんの逆トリお願いします。後、前回コメントができず、すみませんでした。リクエストは無理でしたらスルーでも構いません。よければ宜しくお願い致します。 (2018年8月6日 22時) (レス) id: 3e587b9082 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 千晴さん» こちらこそありがとうございます。 (2018年8月6日 17時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もこすけ | 作成日時:2018年7月22日 21時