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二百四十八話 [赤の記憶] ページ50

何度も踏みつけられた。
何度も幼い心を引き裂かれた。
何度も泣き叫んだ。
何度も何度も、自由を願い、そして叶わないのだと痛感させられた。



ーどうして、こんな世界に生まれてしまった?ー



天使でも悪魔でも無い、歪な存在。
人間ですら無いこんな醜い化け物、存在している価値も無い。



「ーーーーッ、ーー」



目の前の"人"は、醜い化け物を踏みつけて嘲笑う。
正義を掲げた存在は、化け物を踏みつけることに抵抗なんて無い。



ー嗚呼、なんて酷い世界ー



弱いものが淘汰されるのは仕方の無い事か。
強さの為に道徳すら捨てるのは当然のことか。



ーこの世界で生きるなんて、不可能でしかないー



失望した、こんな馬鹿げた世界に。



「ぅ…ぁあ…」



喉からもれる、聞くに耐えない呻き声。
冷たく汚い地面に爪を立て、己の手を掲げた。
親指と中指を合わせ、目を閉じる。



「ーーーー!!」



目の前の人間がなにかを騒いでいた。
だがもう遅い。
化け物が従順なままだと思い込んでいた愚かさが悪いのだ。



「あは…」



パチン



指が音を奏でた。
瞬間、目の前の人間の腹に鉄骨が突き刺さる。
口からゴポリと血があふれていた。



「ふふ…うふふふ…」



不気味な笑いが響く。
目を見開き、なにかを叫ぶソレ。
外から他の人間の足音が聞こえた。
でももう全て遅い、枷は壊れてしまったのだ。
もう一度指を鳴らすと、今度は部屋の壁に鉄骨が突き刺さり、壊れた。



「ーーッ!!ーーッ!!」



赤い液体を流しながら叫ぶ生き物を見下ろす。
その生き物は知っているのだろう、化け物の手に握られた石がなにを意味するのかを。
脆弱な腕でも、これくらいは持ち上げられた。



「…あははは…」



両手で瓦礫を持ち上げる。
どうしてもっと早くこうしなかったのだろう。
こんな簡単に…壊せるのに。



「さようなら」



ぐしゃりと音がした。
振り下ろされた手が赤く染まった。
何処かで爆発音がする。
じわりじわりと、肌に触れる液体の温もりと爆風の熱さ。



「あ、あああああ…!」



歓喜でも号哭でも無い声が響いた。
ふと化け物は、近くに転がるものに気づく。



「こんな…世界…」



鏡の中には、紫色の目をした化け物がうつっていた。

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riia - こんなに長いお話は初めてみるので尊敬します!他の夢小説よりちゃんとしていてすごく面白いです!神作だと思います!大好きです!登場人物の性格もちゃんと掴めていて見ていて楽しいです!ほんとに文ストの中に居そうで違和感がありません!設定とか凄いと思います!! (2022年8月5日 16時) (レス) @page24 id: 9d716aa4c8 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - †三毛猫†さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます。泣いていただけたようで、書いているこちらとしてはとてもありがたい事です。とても嬉しいです。これからもこの作品をよろしくお願いします。 (2019年5月19日 12時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
†三毛猫†(プロフ) - 毎回、夢主ちゃんの過去のお話しで泣いてしまいます。こんなに感動できる物語がかける作者さんを尊敬してます (2019年5月18日 19時) (レス) id: a139b9767e (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - さくらかつきのようになりたい←さん» コメントありがとうございます。そんなに喜んでいただけるとこちらとしても書いていてよかったと思います。近々、第7章を出しますのでよろしければ読んでください。皆様の応援、大変嬉しいです。今後とも、この作品をよろしくお願いします。 (2019年5月18日 13時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
さくらかつきのようになりたい← - BEASTも楽しみにしてます!小泉ちゃんがどう活躍(?)するのか…アッダメだ私の脳じゃ思い付かない…!!(←)コホン…体調にも気を付けて、作者さんのペースで更新して下さい!(← 何か上からで済みません…!!)我々読者は何時までも待ち続けております!!長文失礼しました! (2019年5月17日 20時) (レス) id: 1276fff981 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2018年6月9日 19時

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