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二百三十九話 [誰を選んで守る] ページ41

バラバラに逃げよう、与謝野の提案に谷崎と賢治の顔に衝撃が走った。



「駄目ですよ!皆一緒にいないと…」



「判ってる、だか今なら《猟犬》は一人だ。散って逃げれば三人は助かる」



二人は何処か納得出来ないように黙った。
与謝野はそのまま逃走経路は、と広津に問う。
経路は整っている、今から連絡すれば五分で可能だと返す。



「…よし、約束してくれ」



もしかしたらこの先、この中の誰かが死ぬかもしれない。
それでも、



「誰が生き残っても探偵社再建に命を懸けると」



生き残った者がそれを成し遂げる。
二人は顔を見合わせ、決意したように頷いた。



「判ッてます」



「やりましょう!」



「勿論」



もとより、この世界に来るまで死んでいたような命だ。
再建の為に懸けるのなら惜しくも無い。



『私も私で散って逃げれば…』



その瞬間、ぞくっとした寒気を感じた。
まるで誰かに殺意が向けられているような寒気。



「おわッ!!ンだよ!!」



気づけば、自分は立原の腕を掴み上げていた。
突然掴まれた立原は目を白黒させる。



「ごめん、なんでもない…」



反射的に掴んだ手を離すと、立原は訳が判らないような顔をした。
気のせい?いや、今のは。



『選びなさい』



その時、聞き慣れた声が聞こえた気がした。
ハッとして顔をあげると、そこには不思議そうな顔をした与謝野が立っていた。



「…私は、与謝野先生についていきます」



与謝野が驚いたように目を見開く。
この選択が間違いであるなら、あんな声は聞こえない筈。



「私はもともと与謝野先生を敦の元へ連れて行く為にここに来ました。
それに、さっきの現象がまた起こせるなら力になれるし、私なら囮にだってなれます」



政府は、与謝野より魔女の娘たる自分を先に排除したい筈だから。
与謝野は囮なんてやめな、と云おうとした。
だが、こうして決意した彼女が決意を曲げるような真似は。



「判ったよ、…ついてきな」



絶対にしない。
与謝野の護衛をしつつ、敦達の元へ導く。



「どうやら話はまとまったようだな。
…この先は複雑な迷路だ、各々の逃亡車輌へはこの地図を確認せよ」



音を立ててエレベーターの扉が開いた。
薄暗く、別れた道に足を踏み入れる。



『願わくば、誰も欠けぬように』



そう願って、一歩進んだ。

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riia - こんなに長いお話は初めてみるので尊敬します!他の夢小説よりちゃんとしていてすごく面白いです!神作だと思います!大好きです!登場人物の性格もちゃんと掴めていて見ていて楽しいです!ほんとに文ストの中に居そうで違和感がありません!設定とか凄いと思います!! (2022年8月5日 16時) (レス) @page24 id: 9d716aa4c8 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - †三毛猫†さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます。泣いていただけたようで、書いているこちらとしてはとてもありがたい事です。とても嬉しいです。これからもこの作品をよろしくお願いします。 (2019年5月19日 12時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
†三毛猫†(プロフ) - 毎回、夢主ちゃんの過去のお話しで泣いてしまいます。こんなに感動できる物語がかける作者さんを尊敬してます (2019年5月18日 19時) (レス) id: a139b9767e (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - さくらかつきのようになりたい←さん» コメントありがとうございます。そんなに喜んでいただけるとこちらとしても書いていてよかったと思います。近々、第7章を出しますのでよろしければ読んでください。皆様の応援、大変嬉しいです。今後とも、この作品をよろしくお願いします。 (2019年5月18日 13時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
さくらかつきのようになりたい← - BEASTも楽しみにしてます!小泉ちゃんがどう活躍(?)するのか…アッダメだ私の脳じゃ思い付かない…!!(←)コホン…体調にも気を付けて、作者さんのペースで更新して下さい!(← 何か上からで済みません…!!)我々読者は何時までも待ち続けております!!長文失礼しました! (2019年5月17日 20時) (レス) id: 1276fff981 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2018年6月9日 19時

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