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サプライズ ページ4

「入れた?」


「うん。」


「そしたら、次ね。アイス売り場に行って!」


飲み物を入れたことで、カゴは一気に重くなった。
しかし君は、まだこの重量を増やす気でいるらしい。


「スイカのアイス、2つ。あとチョコアイスも2つ。」


「…ん。」


「次、最後。」


また、この声だ。


旅行に行った時と同じような、とっておきのサプライズを僕に仕掛けようとしている声。


君は一体、今度は何を僕に繰り出すというのだろうか。



「何?」


「入り口の方に行って。」


「入り口?」


「そう。」


君の言う通り、僕はレジの前を通って入り口の方へ向かった。


「来たけど。」


「じゃあ、行くよ?」


何のことやら、僕にはさっぱり分からなかったけど
深く考えるよりも前に、その答えは目の前に提示された。


ガラスの自動ドア越しに見える柱の陰から、傘を差した君が突然に顔を出したのだ。


「へへ、びっくりした?」


電話越しに、君の声がそう聞こえた。
そしてガラスの向こうにいる君の口も、同時に動いていた。


「…うん。」


雨の中ですら君の笑顔は眩しいものだから、僕は心底驚いた。


相変わらず何も顔には出せない僕だけど
これはこれで驚いているのだ。


君がドアの前で傘を閉じたから、僕は電話を切った。
君の屈託無く笑う顔が、自動ドアをくぐってこちらに近づいてくる。


「やっぱり、全然驚かないね野坂くん。」


直接話した時の君の第一声は、それだった。


「驚いてるよ。」


「はは、そうは見えないなぁ。それ、ありがとう!重かった?」


「まぁ、それなりにね。」


ごめんごめん、と君は小さく呟いた。

もうこれで、君が買いたいものは全て終わりだろうと確信していたのだが
君はレジの前にあったチューインガムを最後の最後にカゴに入れて、僕の確信を裏切った。


「ねぇ、それで何してたの?」


会計を済ませて店を出た後、君はもう一度そう聞いた。


「散歩。」


だから適当に、そう答えた。


君は、ふぅんと一度頷いて
それ以上深く聞こうとはしなかった。


一枚の袋では収まらず、コンビニの店員は二つの袋に分けて商品を詰め込んだ。


君は一袋ずつ持とうと僕に提案したが、どちらの袋もそこそこ重量があったため君の細い腕にかける方を選ぶことができず


結局僕が二つの袋を手に提げて歩いていた。

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カトラオ - はじめまして!!もちまるさんの小説に出会えて毎日仕事終わりに読むのが楽しみで仕方ありません。まだ全部読み切っては無いのですが、感動とドキドキの展開を毎日楽しみにしていることだけどうしても伝えたかったのでコメントを残します。 (2020年7月22日 21時) (レス) id: eccc16e070 (このIDを非表示/違反報告)
miginoaoi(プロフ) - 全部読みました。ボロ泣きしてしまいました…すごく切なくて感動する話ですね。続気が気になりました!今は無理でも貴方様の更新をずっとまちます! (2020年1月15日 0時) (レス) id: 5d51d334c7 (このIDを非表示/違反報告)
ハニートースト 通称,ハニトン!(プロフ) - 作者様の作品は全て読ませていただきましたが、完全に虜になりました。言葉選びが繊細で、儚くて、思わず世界に入り込んだ気分で読んでしまいます。こちらの小説なのですが、co shu nieというバンドのアマヤドリという曲がピッタリだったので、伝えてしまいました。 (2020年1月6日 19時) (レス) id: b6696be840 (このIDを非表示/違反報告)
聖羅(プロフ) - 初めまして。この小説を読んで泣きました。もちまる。さんの小説がとても大好きでずっと待ってました。これからもずっと応援してます! (2019年12月24日 23時) (レス) id: 07b14ef242 (このIDを非表示/違反報告)
ルナ☆(プロフ) - 初めまして。君の脳になりたいの方を読んで此方にきました。私、本や映画を見ても絶対泣かないのに、この小説と君の脳になりたいの小説では泣きました。私は今不登校で、死にたいって思ってたけど、これを見てまだ頑張ろって思えました。何年でも待ってます。頑張れ! (2019年11月28日 14時) (レス) id: 65ed62dd2f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もちまる。 | 作成日時:2019年8月12日 21時

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