いつもの朝 ページ10
「ギブ！ギブ！！！」
頭のてっぺんからプシューっと出たのは、大量の湯気、水蒸気。
私1台置いとけば、もう加湿器なんかいらないんじゃないかってくらいの勢いだ。
「あは、はははっ、」
パッと離された指と腕。
ようやく鳴り止んだサイレンの代わりに響いたのは、気持ち良いくらいの笑い声だ。
「なんだ、全然余裕じゃないね。」
「もう、実証すんな！バカ。」
未だにクスクス笑っている彼に、腹が立つ。
あの時もああいう時もあんな時も、そんでもって今も、何でこんなに余裕なんだよ…！
「ねぇ、今日もこっちで寝るの？」
野坂くんのドSモードがようやく収まってからまた暫く課題をやって、時計はいよいよ23時を回った。
少しだけ瞼が重い。
明日からまた学校だし、そろそろ寝ようか。
そんなことを思っていた。
「え？うん。」
「折角だし西蔭のベッド、借りちゃえばいいのに。」
「借りないよ、西蔭くんに悪いし。布団だってなんだかんだ、寝心地良いしね。」
「ふぅん…そうなんだ。おやすみ。」
……ほら、どーせ自覚してないんだろうけど。
“西蔭のベッド、借りちゃえば”なんて軽々しく彼が言うから、私の中のテンションは1ミリずつ下がっていく。
例えばピンと立ったウサギの耳が、少しずつ下がっていくみたいに。
くるっと上がった柴犬の尻尾が、ゆっくりゆっくり垂れていくみたいに。
だってまるで、女の子として見られていないみたいじゃないか。
「…おやすみー。」
さっきはあんなにドキドキさせてきたくせに、やけに素っ気ない“おやすみ”だな。
そんなことをつい思ったけれど、よくよく考えればこれこそが通常運転。
野坂くんの中にいた不気味な誰かは、やっと姿を消したらしい。
「……んー…。」
寝返りを打てば、柔らかく肌に擦れる布団の感触が伝ってくる。
うっすらと開けた瞼の外はもう明るい。
いつものお洒落なコーヒーの香り。
誰かの物音。
「…朝ぁ……？」
あー…嫌だな。今日学校か。
起きたくないし。もっと寝てたいし。動きたくないし。
もはや布団と結婚したいし。
「A。」
「んー…。」
「朝ごはん。」
「……パン？」
「うん。ハムとチーズ。」
「……食べる。」
朝一番の、切れ切れな会話。
いつも通りだ。
あぁ…やっと。やっと野坂くんのいるいつもの朝が、戻ってきた。
戻って、きたんだなぁ…。
続く (更新停止中)
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ららん - 野坂くんのかっこよさにドキドキしてます！続きが気になります！ (2022年4月23日 8時) (
レス) id: 8ab8086b1e (このIDを非表示/違反報告)
もも - どっきどっきしてるよ〜!!!更新楽しみです('▽'*) (2021年5月6日 23時) (レス) id: 150f83a4c1 (このIDを非表示/違反報告)
絵菜 - やった〜〜続編だ！！更新待ってます！！ (2021年3月7日 13時) (レス) id: da77361163 (このIDを非表示/違反報告)
はちみつ(プロフ) - とても面白いし、ドキドキしてニヤケ止まりませんでした笑更新頑張ってください！ (2020年12月27日 14時) (レス) id: 25159701e6 (このIDを非表示/違反報告)
さくらんぼ - 続編おめでとうございます！このお話大っ好きです！！更新待ってます！！ (2020年11月4日 20時) (レス) id: 023268ba1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちまる。 | 作成日時：2020年9月10日 11時
