役に立つ必殺技 ページ7
目の前に、綺麗な二重幅。
それからいつもの、長い睫毛。
「ねぇっ、野坂くん？」
もうこれ以上後ろには逃げられないのに、じわじわとゆっくり近づいてくる彼の顔は止まらない。
「野坂くんって…ば！」
彼を避けるようにギリリと首を捻って、彼の胸板を拳で叩いた。
______もう、どうしちゃったの。
こんなのキャラじゃないじゃん。まるで野坂くんの中に、違う誰かが入っているみたい。
…と思えば、真顔を貫いていた彼の口角が抑えられなくなったみたいにじわじわとゆっくり上がる。
「…何笑ってんのよ。」
…なんだ、冗談か。安心した。
こんな際どいおふざけを平気でやってしまう辺り、野坂くんはやっぱり野坂くんだ。
「ふざっ…けんな、バカ！」
そういう私も、何故か笑いが込み上げる。
顔は相変わらずの至近距離。
そのほんの数センチの中に、2人の笑い声が溶けるみたいに混ざって消えた。
「はは、そんなに真剣な顔されると思わなくて。」
ぐぐ、と力が抜けるように倒れ込んで、野坂くんも私の横にダイブする。
「真剣っていうか、焦っただけだし。」
私は仰向けに、彼はうつ伏せに。
ケラケラと笑いながら、2人仲良く寝転がっていた。
もちろん、ソファがそんなに広いわけではない。
手首から肩までぴったりだ。
「ねーえ、落ちる。」
「ん。」
私の気怠げなSOSにガバッと起き上がった野坂くんは、わしゃわしゃと手で前髪を整えた。
相変わらずの色白な肌が、今日はやけに映えている。
「じゃあ、ヒントちょうだい。」
そして野坂くんは、続けてポツリと呟いた。
急に始まったさっきの続き。
けど…ヒントとして言えることと言えば。
同じクラスで、サッカー部で、顔と頭がめちゃくちゃ良くて。
…何これ。どれを言ったって、もうほとんど答えじゃないか。
「じゃあ、クラスどこ？」
ソファの背もたれに腕を回しながら、彼はクスクス笑ってそう尋ねる。
その笑顔が、何だか無邪気な子供みたい。
けどそんな顔で聞かれても、言えないものは言えないのだ。
逃げるは恥だがナンタラカンタラって、まさにこういうこと。
「わ…たし、宿題やってくる！！」
「あれ。何か出てるの？」
「あっ…あ〜、そういえば。」
すっかり忘れていたけれど、野坂くんが1週間いなかった間にごっそり溜まった課題のプリントを、今日はわざわざご丁寧に持ち帰ってきてあげたのだ。
なんて言ったって私、優しいから。
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ららん - 野坂くんのかっこよさにドキドキしてます！続きが気になります！ (2022年4月23日 8時) (
レス) id: 8ab8086b1e (このIDを非表示/違反報告)
もも - どっきどっきしてるよ〜!!!更新楽しみです('▽'*) (2021年5月6日 23時) (レス) id: 150f83a4c1 (このIDを非表示/違反報告)
絵菜 - やった〜〜続編だ！！更新待ってます！！ (2021年3月7日 13時) (レス) id: da77361163 (このIDを非表示/違反報告)
はちみつ(プロフ) - とても面白いし、ドキドキしてニヤケ止まりませんでした笑更新頑張ってください！ (2020年12月27日 14時) (レス) id: 25159701e6 (このIDを非表示/違反報告)
さくらんぼ - 続編おめでとうございます！このお話大っ好きです！！更新待ってます！！ (2020年11月4日 20時) (レス) id: 023268ba1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちまる。 | 作成日時：2020年9月10日 11時
