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お仕事です 5 ページ6

護身用の拳銃、ナイフ。
暗闇に溶け込むかのような真っ黒なスーツ。
そしてぶかぶかの上着を着てフードを被る。

「ふう…」

何度経験しても、任務に同行するのは慣れない。
何時もより早い動悸が聴こえ、不安が募る。


緊張、恐怖、不安。
様々な感情が混ざったような不思議な気分だ。

自分の気持ちを無理矢理抑え込む様に、クローゼットの扉を閉める。


「Aちゃん、気を付けるんだよ」
「勿論です」

今すぐにでも涙が零れそうなのに、何故だか私は笑みを浮かべてそう答えていた。




「広津さん」
「今晩は、湊さん」
基本的に、私が任務に同行するのは広津さんばかりだ。
きっと、それ程首領が広津さんに信頼を置いているのだろう。

「今日も宜しく御願い致します」
「此方こそ」




『圧倒的』
そんな言葉が合っている、いや其れ以上だと思う様な光景が目の前には広がっていた。


現場はまさに凄惨そのもので、赤く紅く、血に塗れていた。
あっという間の出来事で、何が起こっていたのかよく理解出来ない。

そんなことに今や少しずつ慣れつつある自分が嫌になった。


8割程度は片付いたようで、床にはつい先刻まで息をしていた人々が転がっていた。
私は隅の方で傍観していただけだったため、特に何をしたというわけでもなかったのだが。

ふと気付くと、私の足元の近くに、拳銃が一丁置かれていた。
多分誰かのものが蹴飛ばされたか何かで此方のほうにきてしまったのだろう。
油断した私は屈んで拾おうとした。

しかし、問題はここからだった。


私の方にどたどたと鈍い足音を響かせて男が1人やって来た。
私は驚き、拾おうとした拳銃から手を離した。

男はその拳銃を掻っ攫うようにして床から拾いあげ、

「ひひッ…」

次の瞬間、

「っあッ!!」

自分自身の頭に拳銃を当て、引き金を


パァンッ


引いた────────


目の前の男の頭から噴き出す飛沫はただただ赤く、私の視界を支配した。

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もちうどん。(プロフ) - 焔さん» ありがとうございます!申し訳ないのですが、Twitterの方で通知が来ず、垢名がわかりませんので教えてもらえると幸いです (2018年1月14日 18時) (レス) id: add17265eb (このIDを非表示/違反報告)
もちうどん。(プロフ) - 伍目神さん» ご指摘ありがとうございます。予測変換で出したもので実在の方の漢字になっていました…。修正させていただきました。 (2018年1月14日 18時) (レス) id: add17265eb (このIDを非表示/違反報告)
- ツイッターフォローしましたよー! (2018年1月14日 15時) (レス) id: 51d4d11a23 (このIDを非表示/違反報告)
伍目神(プロフ) - すみません設定キーワードについてですが、上記のではなく森鴎外だと思われます。 (2018年1月13日 13時) (レス) id: de0f021735 (このIDを非表示/違反報告)
ドットコム - 罪深いほど格好い(真顔)。 (2018年1月7日 20時) (レス) id: d020a027fd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もちうどん。 | 作成日時:2018年1月4日 11時

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