【d!】我々のメイドリーダー 2 (ページ7)

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「おや、こんなところにいたんですね」
『スチュワード！』

玄関口で清掃の報告を確認していると、後ろからスチュワードに声をかけられた。
いつものようにすました顔でこちらを見ているがグルッペン様は大丈夫なのだろうか…。

「こちらの状況はいかがですか？」
『順調ですよ。応接室の使用後清掃も済んでいます』
「なるほど」

人のいい笑顔でほほ笑むとポンと両手を合わせた。

「いまからグルッペン様へ紅茶をお届けに行くのですがよければ代わりに行っていただけませんか？」
『え、それはスチュワードが行かれるのでは？』
「いえ、実はこれから別件で呼ばれてましてどうしようかと迷っていたんですよ」

そう言って残念そうに眉と肩を下げるがどこか芝居じみているように感じるのは気のせいだろうか。
断る理由などはないもののやはり1人で行くにはまだ心細い。

「じゃ、お願いしますね！」
『えぇ！？』

心の中で迷っているとティーワゴンを私の前に置いたままスタスタと廊下を歩いて行ってしまった。
こっちの声は聞こえていないふりをしているのか何度声をかけても反応せずついに姿が見えなくなってしまった。

廊下に残された私はずっと突っ立っていることもできず、置き去りにされたティーワゴンを押してグルッペン様の執務室へ向かった。

いつも通りにノックをしたらいいのだが。
扉前に来て早３分は経過したのだろうか。

そわそわと落ち着かず、視線をあちこちへ向けるも誰も通らない。
それはそうだ、我が国の総統の執務室に誰もがたどり着く構造なんてしていない。

そうしているうちに紅茶用のお湯は冷めていく。
腹をくくってノックをしようと腕を上げると中から先ほど聞いたときより柔らかい声が聞こえた。

「入っていいぞ、A」

いつから扉前にいたことに気づいていたのだろうか。
驚きで思わず口が開く、がなんとか正気を取り戻すと一呼吸おいて扉のドアノブに手をかけた。

『失礼いたします』

扉を開け一礼してティーワゴンを押しながら入室する。
ちらりと盗み見たグルッペン様は椅子に座ったままカーテンの空いた窓の外を眺めていた。

できる限り物音を立てずに紅茶を用意する。
あぁ、やはり冷めてしまっている…うまく抽出できるか心配である。
取り替えるか先に誤っておこうと思い口を開きながらグルッペン様へ体を向けると、グルッペン様はいつの間にか立ち上がりこちらへ視線を向けていたのだがその瞳はいつもより弱々しく普段みる事のないものだった。