曖昧な距離感

…19(伍代) ページ19

…


ふざけんな。
仮にも男の家に酔った女置いて帰るとか正気かよ。

こっちの都合を全く理解しない難破は逃げるようにして帰っていってしまった。とりあえず先に母親をソファに寝かせてもう一人問題児をどうするか考える。




「ねぇ、ベッドはどこー？」
「……はぁ？」
「もうねむいーねぇ、ベッドはー？」




やっとさっき大人しくなっていたかと思えばいきなり立ち上がりふらついている足取りのまま歩き出す。

慌てて着いていくと人の家の部屋を片っ端から開けて本当にベットを探している様子だった。




「おい、やめろ。危ねぇから。」
「あ、あったー！！」




俺の部屋をみつけると勝手にベッドに倒れこむ。




「ふかふかだー」




酒に酔ってるとはいえ、危機感の全くない行動に苛立ちを覚える。
それなのに、彼女の無防備な姿をみてしまえば、不覚にも可愛いなんて思ってしまう。

彼女に会ったときから見た目は可愛いと思っていた。市松に入ってからはさらに磨きがかかり、あっというまにマドンナのような存在に。男の中では声をかけるタイミングを見計らってるやつらばかりだった。

そんなこととは知らず、呑気なこの女が心配でほっておけなくて、気になって仕方なくて、傍にいた。

女に対してこんな感情をもったのは初めてで、どうしたらいいかわからない。
でも別に彼女とかそういうのにしなくたって、変わらない今の関係のままで充分だと思っていた。




「ねぇー！伍代もこっちきてよー
一人じゃさびしいよー」




大声呼ばれて視線を移せば布団にダイブしたせいで、ところどころ洋服が乱れてしまっている。

ワンピースが捲れてのぞく細い足や、チラリとする胸元。おまけに少し火照った顔でこっちをみる彼女はもう煽ってるとしか思えない。

それでも残ってる理性で必死に耐え、見ないようにする。




「知らねぇ！一人で寝てろ！」




苛立ちをぶつけるように布団を思いっきり頭から被せて、視界に入らないようにし、彼女を放置して部屋を出た。

好き勝手しやがって。
起きたらただじゃおかねぇ。

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