泣.キ.虫.カ.レ.シ - 南 倉 -

ピエロ02 ページ19

錦。


錦が、帰って来る。




「……あ、は……
やったじゃん！？水鳥錦のこと好きだもんね〜」



そんなことを言って、
水鳥から走り去った。


後ろから、
また水鳥の怒鳴り声が聴こえたけど、


俺は振り向かない。





水鳥は照れ屋だ。

そんな水鳥が可愛くて。
大好きで。
好きで。


錦を見てる水鳥の顔を、
俺に向けてほしくて。



俺は＿＿＿。




「ぅわっ、お前練習もしてねーのになんでそんな汗かいてんだよ！？」


「は、走ってきたっ、から」


「くっせー、近付くな！」


「ちゅ、ちゅーか、錦、帰って来るんだ、って……」




.



その日、
サッカー部内では、錦の話が持ちきりだった。


水鳥は、
子供のようにそわそわしていて、落ち着かなかった。




「……」



俺はというもの……




錦が帰って来ても、
何故か水鳥に話しかけれないでいた。




試合中、

錦が怪我した時、俺はふとベンチに目をやる。



すると、

水鳥の目には、薄っすら光るものが見えたんだ。




パパも、
ママも、
錦でさえも気付いてやれない涙に、


俺は気付いた。






俺が……





「拭ってあげないと……」



俺は水鳥の元へ駆け寄る。

そして思いっきり背中を叩いた。




「って……！？」


「大丈夫大丈夫！
だって錦だし、怪我もすぐ治るっしょ〜！」


「なっ、知ってる……し」


「水鳥が怪我治してあげたら〜？」


「は、浜野ぉぉぉおおぉ！！」




大丈夫 大丈夫

痛くも痒くもないんだよ

水鳥が笑ってくれるなら



大丈夫 大丈夫



「なみのりピエロー！

……ゎっ、たたぁ！」


「は、浜野君、大丈夫ですか？」


「大丈夫 大丈夫！」




無様に転ぶ僕は



小さなサーカスの




玉乗りピエロ




*

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