10月・続々 ページ31
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「ようさん拾えたなあ。」
『ばあちゃんと一緒に食べてな!』
「うん。ばあちゃんも喜ぶわ。
このススキも玄関に飾っとく。」
『来月は十日夜やから、ススキもええ味だすで。』
「はは、確かにそうやな。」
1個づつ持った竹カゴには
栗、アケビ、ヤマボウシ、ススキなどなど。
『……信ちゃんにおすそ分け出来て良かったわ。
今年は大雨が降ったから心配やったんよ。』
「きっとAのお陰やな。
Aが頑張っとったから山も応えてくれたんや。」
『……!なんや、嬉しいこと言ってくれるなあ。
やっぱ信ちゃんはええ人や。』
ふふふ、と嬉しそうに笑ったAと北は
赤色に染った山道を下って行く。
『……ああ、うちも人間やったら良かったのに。』
「A…………」
ぽつり、そう呟いたAの背中は
どこか寂しそうだった。
『人間やったら、信ちゃんと一緒に居れるのに。
皆に土地神なんや、って秘密にせんでもええのに。
ガッコウも行けるし、ばれーも出来る。
好きなものようさん食べて、好きな所にも行ける。
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……人間やったら、
ずっと独りで寂しがらんでもええのに。』
ぼんやりと空を見上げるA。
北は立ち止まったAの後ろで目を伏せる。
『…………なんてな、変なこと言ってごめん。
さ、帰ろか!』
「……おん。」
お社の階段を降りて、北に手を振り見送るA。
北の背中が小さくなった頃、
Aは再びぽつりと呟いた。
『人間になる方法、無いことは無いんやけどな。』
右手に持ったススキの穂が
夕陽を浴びてキラキラと輝いて見えた。
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沙羅(プロフ) - トロピカーナブランケットツッパーナムルさん» めコメントありがとうございます!!そう言って頂けて本当に嬉しいです!!読んで頂きありがとうございました!!! (2021年7月4日 0時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
トロピカーナブランケットツッパーナムル - いやこの作新ガチ好き (2021年7月3日 17時) (レス) id: 99e5f8b903 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - でこりんまんさん» コメントありがとうございます!来て貰えて本当に嬉しいです…!!切ない、でも幸せなお話が書きたかったのでそう言って貰えて私も感涙です……!!!読んで頂きありがとうございました!! (2020年10月26日 12時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
でこりんまん(プロフ) - 幼なじみは個性的から飛んできました……!凄く素敵なお話でうるうるしながらよませていただきました……!! (2020年10月26日 8時) (レス) id: 5f3c679f42 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:沙羅 | 作成日時:2020年10月25日 19時