検索窓
今日:7 hit、昨日:3 hit、合計:11,046 hit

10月・続 ページ30

.




『信ちゃん疲れとらん?』


「大丈夫やで。」


『む、嘘ついたらあかんよ。』


「……ちょっとだけ疲れたわ。」


『んふふ、ほな休憩しよか!
ここの切り株に座ってええで!うちのお気に入り!』





Aが指したのは

だいぶ前に倒れたらしい木の大きな切り株だった。





『ちょっと待っとってな。すぐ戻るから!』


「分かった。」





Aはピョンと小さな崖を飛び降りると

すぐに登ってきた。

手には小さな竹筒。水筒らしい。





『これ沢の水なんやけど……
綺麗やし、めっちゃ冷たくて美味しいねん!』



「……くれるん?」



『そのために汲んできたんやで?』



「ふふ、おおきに。」





美味い、と言いながら飲み干す北。

Aはその様子を嬉しそうに眺めていた。





『信ちゃん歩けそ?』


「大丈夫や。」


『ほな行こか!着いてきてや〜!』





切り株の横にさらに続く獣道。

そこをAと北は進んで行った。





「この山の向こうはもう隣町なん?」



『うん!山頂が町境になっとるよ。』



「山頂……」



『ふふふ、なかなか人は来んから
木の実も採られんと、ようさん生っとんねん!
あ!もう着くで!』






指さした先には大きな栗の木。

地面には沢山のイガが散らばっていた。





「立派な栗の木やなあ……」


『この裏にはアケビも生ってんねんで!
好きなだけ採って行ってや!』





そう言うAの手には竹で編まれたカゴ。

それを北に渡すと

手馴れたように栗を拾い始めた。





「痛っ……」


『あああ!!信ちゃん大丈夫!?
あぶ、危ないから信ちゃんは離れとって!!!』





イガを触ってしまい思わず痛い、と漏らした北に

Aは慌てて北を栗から離す。





「そんな心配せんでもええよ。
俺の不注意やったし、」


『駄目や!信ちゃん怪我したら悲しい!!
栗はうちが拾ったるから信ちゃんはアケビ担当な!』


「ふふ、Aは優しいな。
分かったわ、俺はアケビ採って来る。」


『あっ……で、でもどうしても栗拾いたかったら
うちも隣で見てたるから、ええよ……?』





しゅん、と北の様子を伺うように呟くA。

北は、はは、と笑うとAの頭を撫でる。





「ほんなら、アケビ採って来た後に
一緒に拾ってくれん?」


『うん!!
じゃあうちも他の木の実集めてくるわ!
栗は信ちゃんと拾うからな!』





ご機嫌になったAは他の木の実を拾いに行った。

10月・続々→←10月



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (21 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
16人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

沙羅(プロフ) - トロピカーナブランケットツッパーナムルさん» めコメントありがとうございます!!そう言って頂けて本当に嬉しいです!!読んで頂きありがとうございました!!! (2021年7月4日 0時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
トロピカーナブランケットツッパーナムル - いやこの作新ガチ好き (2021年7月3日 17時) (レス) id: 99e5f8b903 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - でこりんまんさん» コメントありがとうございます!来て貰えて本当に嬉しいです…!!切ない、でも幸せなお話が書きたかったのでそう言って貰えて私も感涙です……!!!読んで頂きありがとうございました!! (2020年10月26日 12時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
でこりんまん(プロフ) - 幼なじみは個性的から飛んできました……!凄く素敵なお話でうるうるしながらよませていただきました……!! (2020年10月26日 8時) (レス) id: 5f3c679f42 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:沙羅 | 作成日時:2020年10月25日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。