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『ッ待て!ッ……』





Aは腹部への激痛に気付き足が止まりかける。






『これ以上…ッ、鱗滝さんを悲しませる訳には…!』





ふぅ、と強く息を吐いてAは足に力を込める。





『全、集中……木霊の呼吸【壱ノ型・樹冠の遠慮】』






ヒュ、と刃が鬼の頸に触れる。

手鬼も抵抗しAの体勢が崩れた。






『ッ……!!』





そのまま振るった刀は何の作用か、

刃から可視化された木の芽が伸びる。





木の芽は手鬼の傷口にまとわりついた。






「何だ、これ…………!!」






木の芽の先には小さな白い(わだかま)り。

樹の精、と言えば良いのだろうか。






『!?』

「傷が、塞がらな…………!!」






焦る手鬼。

だが止まれば朝日で消滅してしまう。






「くそぉ……!!」






血を流したまま手鬼は森の奥へ消えていく。

Aはもう動けずそのまま鬼を見送った。






『は……ッ、何、今の…………
木の芽が、鬼の……治癒を防いだ……?』






口に溜まった血を吐き出しながら

Aはゆっくりと山を下る。






ここで放たれた技が

後の空番、【拾ノ型】になることはまだ知らない。









─────








「こちらで"玉鋼"を選んで頂きます」







並べられた石のような塊。

Aは薄く翡翠に輝く玉鋼を選んだ。







「隊服と刀は完成し次第お届け致します」






あれよあれよという間に

Aは芽吹の住む山への帰路に就いていた。




『…………』




農家の家から聞こえる家族の話し声。




『(良いなぁ。温かくて良いなぁ。
この家の子は両親に愛されてるんだろうなぁ)』




Aは零れた涙に気付かないふりをして

大きな藤の木が立つ山の麓へ帰った。







『お師匠……もう寝てるかなぁ』






起こしたらいけない、と

Aは家の前で立ち止まりそっと手を伸ばす。





刹那、バンッと音がして

引き戸の扉が勢いよく開いた。





『ッ!?』

「A……!!Aか!?」

『Aです…………?』





思わず疑問形で答えたAは

あっという間に芽吹の腕の中に収まった。





小さく鼻をすする音が夜風の中に混じる。





「良かった、よく、帰って来たなぁ……
A……お前、本当によく頑張ったな……」

『お師匠……』







「おかえり……A」







Aの目から涙が零れる。









『ッただいま、お師匠(お父さん)

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沙羅(プロフ) - 邑さん» コメントありがとうございます!!長らくお付き合い頂いて本当に嬉しいです……!芽吹お師匠のところは私も書いてて泣きそうでした……今後は宇髄さん以外にも沢山の方が登場予定なので、ぜひよろしくお願いしますー!! (2020年2月2日 18時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
- 前編から読ませて頂いています、凄くこの作品好きです!!師範のところ、もう、涙がぼろぼろでてきました...!! (2020年2月2日 17時) (レス) id: 451c1f62e7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:沙羅 | 作成日時:2020年1月26日 21時

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