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no side
『すっかり遅くなってしまった……!』
Aは夜道を駆け抜ける。
行先は勿論、芽吹の家だ。
昇進したことを柱を引退した芽吹に伝えるため
全速力で走っていた。
大きな藤の木に軽く手を触れ
久々の帰宅を藤の木に告げる。
『ただいま、お師匠いるかな?』
ザワリ、と生ぬるい風が藤の木を揺らした。
異様な雰囲気だ。
『……?何でそんなに穏やかじゃない────ッ!』
Aはバッと顔を上げ家に向かって走り出した。
何かがある。
逆撫でされるような嫌な感覚。
内蔵を、心臓を掴まれたように苦しい。
冷や汗が背中をつたう。
『お師匠ッッ!!』
勢いよく開いた扉は月光を受け止め
土間の奥にうずくまる人をよく見せた。
「あ"……う"ぅ……A"……か……?」
『ッ!?お師匠、そんな所で何を……』
芽吹の瞳は縦に長い。
芽吹の爪は何でも切り裂けるように鋭い。
芽吹の歯は、鬼のように鋭く尖っていた。
『お師匠、お師匠……?
嘘ですよね?何で、そんな鬼みたいな……』
ゆらりと芽吹が立ち上がる。
「逃げロ……否、殺セ、俺ヲ………殺セ…………!」
『!?や、やですよ!!
何で!!何でお師匠を殺さなきゃならないんです!』
「俺ハ……奴に、鬼舞辻無惨に、」
『鬼舞辻……?』
「マダ……近クニ、いるハズだ、だかラ、早ク…」
鬼化した芽吹は
Aを襲うまいと必死に抵抗していた。
『お師匠……嫌ですお師匠!!
私!お師匠を殺せないです!!だって、だって……
私、独りになってしまいます!!
お師匠だけが私の家族なんですよ!?
助けてくれたお師匠を殺すなんて出来ないし、
私まだお師匠に恩返しもしてないし……!!
そうだ、私、"甲"になったんです!!
お師匠の好きなお酒も買って来ましたから、
それで……お祝いして下さいよ──────』
ボロボロと泣くA。
いつの間にか芽吹の目にも涙が浮かんでいた。
「ごめんナァ……鬼ニ、なんて、
俺ァ……なるツモリ無かっタンダ…………」
『なら何でッ……』
「鬼舞辻は規格外の強さダ…………
応戦、シタガ……このザマだ……」
Aは芽吹の手を握る。
芽吹は息を荒くして唇を噛んだ。
「…………昇進、おめデとう」
『!!』
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沙羅(プロフ) - 邑さん» コメントありがとうございます!!長らくお付き合い頂いて本当に嬉しいです……!芽吹お師匠のところは私も書いてて泣きそうでした……今後は宇髄さん以外にも沢山の方が登場予定なので、ぜひよろしくお願いしますー!! (2020年2月2日 18時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
邑 - 前編から読ませて頂いています、凄くこの作品好きです!!師範のところ、もう、涙がぼろぼろでてきました...!! (2020年2月2日 17時) (レス) id: 451c1f62e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:沙羅 | 作成日時:2020年1月26日 21時