ひゃくじゅうはち ページ30
貴女side
情報が足りない。
そう云った治くんは気付いたことを話す。
昨日の酒場で安吾くんは嘘をついていたと云う事。
太宰「あの傘の濡れ方は
二、三分使われた感じじゃあない。
取引の後三時間で
使ったなら、乾くには時間が足りない」
織田「着替えを持っていたのかも知れない」
太宰「着替えは無かったし、空間も無かった」
安吾くんは嘘をついた。
取引に傘は使っていない。
勿論、その前にも、後にも。
貴女『ッ……』
太宰「ここの始末は私達がやっておくよ。
安吾を頼む」
治くんは気をつけろ、と云って
作くんも返事をする。
作くんが歩き出した時だった。
織田「太宰!」
敵兵「動クナ……」
構えられた銃は治くんに向いている。
太宰「おやおや。
あれだけ撃たれて立ち上がるなんて、
驚異的な精神力だね」
織田「太宰、じっとしてろ。俺が何とかする」
作くんはそろそろと拳銃に指を伸ばす。
私は異能を使い過ぎたせいで今は何も出来ない。
太宰「君達の組織の名は"ミミック"だ。
そうだろう?」
襲撃者は答えない。
太宰「答えを期待しちゃあいない。
実際のところ、私は君達を敬畏しているのだよ。
これほど真正面から
マフィアにぶつかってくる組織はなかった。
そして私のすぐ目の前に、
これほど殺意ある銃口を向ける事に
成功した者も居なかった」
治くんは歩き出す。
織田「太宰、よせ」
まるで、時間を稼ぐようにも見えたし
本当にタヒを望んでいるようにも見えた。
太宰「さあ撃て。ここだ。この距離なら大丈夫さ」
治くんは満面の笑みを浮かべていた。
太宰「撃っても撃たなくても、君は殺される。
なら最後に敵幹部を葬ってみせろ」
織田「太宰!」
貴女『治くん……』
作くんが叫ぶ。
私は掠れた声しか出なかった。
太宰「頼むよ。私を一緒に連れて行ってくれ。
さあ、さあ、さあ」
治くんは自分の額を指差したまま、
安らぎすら感じる笑みで近付いていく。
──────
太宰「………………………………残念だよ」
治くんはのけぞったまま云った。
太宰「またタヒねなかった」
側頭部、右耳の少し上の皮膚が抉れ、出血していた。
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作者名:沙羅 | 作成日時:2019年5月13日 15時