お隣、32日目 ページ32
▽
「えっ、位置変わんないじゃん…！」
「なんやお前、またここか」
席替えをした。
引いたくじに書かれている番号と、それぞれの席にふられた番号を照らし合わせると、今と変わらぬ席が示されている。
別になりたい席があったわけではないけれど、同じ位置だとなんだか気分が落ちる。どうせなら違うところにいきたかった。
「侑君はどーだった？」
「俺はまだ見てへん」
今から見に行くんや、と言って黒板に張り出された紙を見に席から離れる侑君。1か月前に比べたら、だいぶ仲良くなれたような気がした。
この前…というのは、放課後ちょっとひと悶着会った時のことだが、あれ以来彼は随分慣れ慣れしく接してくるようになったし、名前の呼び方も『水野』から『A』に変わった。
どういう心境の変化だろう。
辺りをぼーっと見渡すと、喜んでる人、落ち込んでる人、友達をからかってる人、様々だ。
(…侑くんとは離れちゃうなあ)
少し寂しいな、なんてそんな考えが頭をふとよぎり、私はハッとする。
何を考えているんだ私は。友達になれたからって、図々しい。
仲良くなれたからって、それ以上でもそれ未満でもない。ただの友達なのに、寂しいだなんておこがましい。
頭をぶんぶんとふって、不純な考えを消そうとする。そうだよ、侑君にとったら、私はただの『友達』なんだ。
___でも、私にとってはね、
▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△
まだ夏の暑さが続く9月の中旬。
私は一人の男の子に出会った。口の悪い、関西弁の男の子。……泣いてる私に、同情も慰めもしなかった、変わった男の子。
もし普通に出会っていたら、性格の悪い子だなと思っていたかもしれない。嫌な奴だと避けていたかもしれない。
だけど、その時の私には、彼がヒーローに見えた。
今まで私がうじうじ惨めったらしく悩んでいたことを、「そんなこと」と簡単に片づけてしまう姿を見て、なんだか全部どうでもよくなった。
ああ私は今までなんでこんな、小さなことで悩んでいたんだろうと、私は妙に晴れ晴れした気分だった。
それでも、私の『良い子ぶった』人間性は変わらなかった。彼と出会って、一回は吹っ切れたつもりだったのに、いつの間にかまた、昔の女々しい自分が顔を出していた。結局そんな簡単に人は変わらない。
私はきっと、つまらない人生を送るんだろう。
そんな風に考えていたある日、
私はあの日の、ヒーローと再会した。
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冬田(プロフ) - 結衣さん» こちらこそ温かいコメントありがとうございます(^-^)本当に嬉しい限りです！そちらの曲も聞いてみたいと思います！ (2020年5月27日 13時) (
レス) id: 4ea05f3e1b (このIDを非表示/違反報告)
結衣 - 本当に素敵なお話しをありがとうございます！！OneRepublicのCounting Starsという曲のようで感動しました！聞いてみてほしいです！ (2020年5月26日 12時) (レス) id: f0b62f3d9b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：冬田 | 作成日時：2020年5月15日 20時
