検索窓
今日:3 hit、昨日:22 hit、合計:85,971 hit

お隣、18日目 ページ18




「……あ」


昼休み。

借りていた本を返そうと図書室に来た俺は、そこで見覚えのある女を見つけた。以前ばあちゃんの荷物を持ってくれたという、あの女だ。

声をかけようかと思ったが、親しいわけでもないのに図々しいかと思いやめておいた。


(…、何しとんのやろ)


図書室に来た割には、本を借りることも探すこともせず、キョロキョロと辺りを見渡している女を、少し不審に思う。

……正直、声をかけたのは気まぐれだった。


「あの、何してはるんですか?」

「ヒエッ、え、あ……ちょっと、探し物をしてて」

「探し物?」


__聞いた話によると、探しているのは自分のものではなく友達の物らしい。

流れで簡単に自己紹介もした。彼女は水野A、2年生。

そして俺がこの前助けたおばあちゃんの家族だとは気づかなかったらしく、そのことを伝えると「ああ!あの時の!」と笑顔になった。


「それで、探し物ってなんや?」

「ボタン、なんですけど……」


なんでそんなものを図書室でなくすのか、とか、別にボタンくらい、とか、そういうことは聞かないでおいた。





▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△





「えっえ、見つけてくれたの…!?」

「たまたま見つけたのだよ!」


えっへっへ、と言って笑うAを見つけ、俺は口元が緩む。

あの後、無事ボタンを見つけ出したAは、自分の探し物を見つけたみたいに喜んで、俺にお礼を言った。

嬉しそうに図書室を飛び出していく姿を見て、少し気になってしまい見に来てみたら、ボタンの持ち主と思しき友達はAに何度もお礼を言っていた。


「ホントにありがとう大好き!」

「偶然見つけただけだから!」


気にしないでとケラケラ笑うA。

ホントに嬉しそうに、楽しそうに笑うAを見ていたら、変に胸がざわついた。なんやこれ、と思い、悪化する前にとその場を後にした。


(…ええ奴なんやな)


教室に戻った後も、嬉しそうなAの顔が頭から離れなかった。


.

お隣、19日目→←お隣、17日目



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (111 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
174人がお気に入り
設定タグ:ハイキュー , 宮侑 , 宮治
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

冬田(プロフ) - 結衣さん» こちらこそ温かいコメントありがとうございます(^-^)本当に嬉しい限りです!そちらの曲も聞いてみたいと思います! (2020年5月27日 13時) (レス) id: 4ea05f3e1b (このIDを非表示/違反報告)
結衣 - 本当に素敵なお話しをありがとうございます!!OneRepublicのCounting Starsという曲のようで感動しました!聞いてみてほしいです! (2020年5月26日 12時) (レス) id: f0b62f3d9b (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:冬田 | 作成日時:2020年5月15日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。